「軍事費をどこから捻出するのか、頭が痛い」
若人の、男女の事情を温かい目と苦笑いで見守る新庄だが、現在の情勢は慌ただしくなっている。
オアシス跡地でモンスターの大量発生が続いた事に危機感を感じた近くの国々が、軍備の拡充に手をつけ始めたからだ。
「軍事費をどこから捻出するのか、頭が痛い」
シドニーも、陳情書という下からの突き上げをくらい、兵士の増員などを行っていた。
そして金が足りないと頭を抱えるのである。
「武具を用意しろと言われましても。手前どもも鉄が足りず、調達には難儀しております。
貴族の皆さま方には、是非、そういった物の調達をお願いする次第であります」
オズワルドも、増やした兵士に配る武具を寄越せと、これまで付き合いの無かった所から購入依頼が届くようになった。
残念ながら鉄は戦略物資で、簡単には調達できない。それを理由に断りはするものの、いずれは鉄を用意され、これで作れと言われるだろう。
その鉄が、どのような品質かは横に置き。
国単位でそのような動きがあれば、他の国はそれを警戒する。
外交官からモンスターの大量発生に対応するためと聞いていても、自分達の国に攻め込んでくるのではないかと考えるからだ。
モンスターの大量発生が再び起こるならいい。
しかしモンスターが湧かなければ兵力が浮いてしまい、ぶつける先は人へと変わる。
原因不明のモンスターの大量発生はいつどこで起きるかも解っていないので、相手が嘘を言ってなくてもそういったリスクは考えないといけないのだ。
今は、対モンスターの戦力増強というだけなのである。
「高町オアシスに手紙を出して、と。
あっちは上手くやっているかな?」
そんな国の動きは、新庄の行動に影響をしない。
新庄はクラフトのギフト能力を持っているが、材料が無ければ、ちょっと魔法と魔術が使えるだけの、ただの珍しい人みたいなものだ。
国の動きは予想の範囲内だが、出来るのは精々モンスター素材の武具をオズワルドに卸すぐらい。
オアシスから出ない、しばらくは留守番と決めている新庄は、国の都合など考える事もなく、自分の目的のためにアイテムを作るのだった。




