「やっぱり、貴族は嫌いです」
責任は一人に取らせたところで意味がないことが多い。
ミスの発案者、その上司で責任者、実行に携わった仲間たち。責任の割合は横に置き、みんな悪かった。
だから誰かだけのせいにして、責任逃れをしていては、何も変わらない。
バラカが怪我をした件はその様にまとめられ、この話はもう終わりと締めくくられた。
その後は新庄から貴族に、加倉井たちから転移者たちに、それぞれ情報共有がなされた。
モンスターの異常発生、おそらくは居るであろう女王の存在は彼らにも想像しやすい話で、情報提供に感謝された。
新庄は防衛戦力として引き留められそうになったが、ゴーレムを使い切ったからと、それを固辞。他の転移者と頑張ってくれと言って逃げていった。
その貴族はやや強引な手段を取ろうとしていたが、新庄に壁を収納したり通路を塞いだり穴を掘ったりされて諦める事になった。
加倉井たちも女性比率の高い転移者たちから勧誘されたが、こちらも断っている。加倉井以外は隣の国の出身なので仕方がない。
相手は上手くいかないだろうと、そこまで強く引き留めなかったので、加倉井たちは円満に別れることができた。
翌朝、野宿した新庄と宿に泊まった加倉井たちは、予定通りに帰路についたのであった。
「やっぱり、貴族は嫌いです」
「シドニーとか、まともな貴族もいるんだから、貴族と一括りにするのは乱暴だよ。
それに、町の危険なんだから強引な手を使ってでも守りたいってのは、理解できる。被害がでないうちは、そこまで怒らなくてもいいさ」
バハムートオアシスへの帰り道。
新庄の話を聞いて、加倉井は不機嫌そうにしていた。
情報提供に感謝しつつも、自分達の都合を無視するような行為に憤りを感じているのだ。
それだけ必死なのだろうというのは分かるし、その行動が私利私欲ではなく町のためならば、気にもならない。
新庄は分からないでもないと理解を示し、その上で自分の意思を通しているので、それ以上を望まなかった。
そして加倉井はというと、そういった事情が分かっても、ムカつくものはムカつくと、機嫌が悪い。
自分のいないところで新庄に何かあるかも知れなかった、というのが不機嫌の理由である。
「それよりも、女王の居場所が分からないのが痛いな。いつこっちに流れてくるかも分からない」
「あー。そうなのですよね……」
新庄は強引に話を変えて加倉井を宥めることになるのだった。




