「止まれ! ここから先は通行止め……ん? お前ら、いや、あんた達も日本人か?」
「まずは、相手の話を聞こうと思う。
一人だと圧が足りない、軽く見られるから、同行をお願いするよ」
荻たちがひとしきり騒いだあと、新庄はそう切り出した。
やろうとしている事は、アポなし飛び込みの営業のようなもの。
先触れを出すことも考えたが、そこまで本格的に動くと仰々しいと思われる。あくまで立ち寄っただけ、様子を見に来ただけという格好を装い、気軽な話し合いを望むことにした。
ただ、一人では警戒するに値しないと、話し合いにならない事もある。
オアシスは新庄が用意したものだが、それ以降の生活は彼らが頑張ってやってきた成果なので、新庄はあまり強く言えない。
支援の規模が影響力と考えると、新庄に頼る必要が無いため、話を聞いてもらえないかもしれないのだ。
そこで加倉井や荻たちが同行すると、話の分野が広がるため、相手も無視しにくくなる。
加倉井や荻たちは狩りをしているので、彼らがそのまま無差別に狩りをして資源を枯渇させると、狩り場がぶつかることになるからだ。
将来のための話し合いとなれば、相手も乗ってくると予測される。
新庄は同郷の同族と仲間意識を持っているが、相手もそうだとは限らないのである。
引き出しが多いのに越したことはなかった。
現在の彼らは鎖国中の、独自勢力として動いている。新庄が用意したオアシスに、あちらの国は入り込めないでいる。
もしかしたら彼らはひとつの組織ではなく寄り合い所帯かもしれないが、大雑把だろうとまとまった意思で動いているようだ。
複数の勢力がぶつかり合っているなら、外との繋がりを求める勢力もあるだろうから、そこは高い確率で間違いはないと思われた。
現地人の勢力は、問答のあとに追い返されている。
新庄はオアシスの製作者なので、周辺環境から内部構造までよく知っていた。最悪、地下を通って無断で潜り込むこともできる。
今回は相手によく分かるようにと、新庄と荻たちのチームは正面からの話し合いを要求する。問答無用ではないので、それでいいはずだった。
オアシスに近付くと、本家と同じく砂避けの外壁が見えてくる。
その壁の門の前に立つと、門番が厳しい表情で誰何してきた。
「止まれ! ここから先は通行止め……ん? お前ら、いや、あんた達も日本人か?」
だが、顔立ちが現地人と違う事に気が付くと、すぐに破顔する。
「あんたらも連合から逃げてきた転移者か! 日本人かどうかの簡単な確認があるけど、歓迎するぜ!」
そうして、特に疑うこともなく、新庄たちを門の内に招き入れるのだった。




