「今回の行軍は、下見であり橋頭堡を築く事にある! 断じて失敗ではない!」
ドラゴンの戦力を、攻めてきたドラゴンから割り出した各国は、その脅威度をかなり高めに見積もった。
行った先にはドラゴン以外のモンスターがいると予測されるので、高めに見積もるのは当たり前だ。
それに数の問題もあり、攻めてきたとき以上の数がいるとなると、話がかなり変わる。
ドラゴン素材が欲しいのであって、失敗したくないのはどの国でも同じだ。
成功率が思ったよりも高くないと判断した国々は、ドラゴンの脅威を理由に、連合を組むこととなった。
対ドラゴンの連合は、正式名称など付けられることもなく、遠征を開始した。
「海中からの攻撃、来ます!」
「大砲、撃てぇーー!!」
ドラゴン討伐に出た彼らの旅は、ドラゴンを見付ける前から苦難の連続であった。
船での移動は海中に潜むモンスターの襲撃を誘い、少なくない数の船が沈んでいった。
慣れない長期間の船旅で体調を崩す者も出てきて、戦力は大幅に低下した。
「トレントです!」
「焼き払え! どうせ道を作らねばならん!」
ドラゴンのいる森、その手前にある別の森でも、モンスターの襲撃があった。
長く森にいたモンスターは森での戦いに慣れているが、森に入ってきたばかりの兵士たちはモンスターの奇襲を受け、徐々に疲弊していく。
森の恵みを得るような戦い方ではなく、森を切り開くような戦い方だったのでまだマシだが、やはり相応の被害を受けることとなった。
「北部、痕跡ありません!」
「南部、別の巨大モンスターと遭遇! 損害二割です!」
「ええい! ドラゴンはどこだ!?」
そして、どの辺りからドラゴンが来たのかはわかるので、近付くことはできたが、ドラゴンを見付けることにも手間取る。
ドラゴンは敵の疲弊を待っているだけなので手出しをしないが、近くに生きているモンスターはそうでもない。森のモンスターに襲われて、連合の兵士たちは次々に倒れていく。
「閣下、このままではドラゴンと戦う戦力が残りません!」
「糞がっ! この近くにドラゴンがいるのは間違いないというのに!!」
ドラゴンが出てこないため、戦力と物資を無駄に消費する連合。
時間と共に減っていく戦力では、ドラゴンと戦うこともできない。
今回の出兵は失敗だと理解すると、理性に従い、撤退を決断する。
「今回の行軍は、下見であり橋頭堡を築く事にある! 断じて失敗ではない!」
分かりやすい捨て台詞で、彼らはドラゴンの森に到達すること無く、国に帰っていくのだった。
一応、言っていることは間違っていないので、帰った彼らはあまり強く叱責されることはなかったという。
他の国も、ここで自国の部下の責任追求をすると、それをつつかれ自国の責任と言われかねないので、きつくは言えなかったらしい。




