「それでも、少なくない被害が出る」
ドラゴンの王は、先遣隊が全滅したことを知り、残念に思う。
ドラゴンは、神々と直接戦いたくない。
だからこそ、全滅する可能性を知った上で彼らを送り出した。
先遣隊は、この世界の人間たちに手を出されて全滅した。前半はともかく、後半はドラゴンから手出しをしなくても人間は攻めてきた。
彼らの最期は、ドラゴンという種を守るための生け贄である。
先に手を出してきたのは転移者とは言え人間であるし、後半を考えれば人間の身勝手な欲望がドラゴンを狩り尽くしていったのだ。
ドラゴンが一方的に悪いとは言えない最低限の条件は整えた。
恐らくも何も、人間は国をあげて森に攻め込んでくるだろう。
それを迎え撃ち、それを理由に攻め返す事になれば、王の策は成る。
今は痛み分けか、ややドラゴンが不利な状況で、そこで更に人間がドラゴンの領域に攻め入ったのなら、反撃しても神々は出てこれない。
人間が欲よりも理性で判断するなら、森に攻めては来ないだろう。
だが、人間がそこまで理性的でないことを、ドラゴンの王は知っている。
「そこで我慢が出来るほど、聞き分けがよくないのが人間だ」
森にはドラゴン以外のモンスターが多数生息し、ドラゴンが戦わずとも、多くの人間が死ぬ。
ドラゴンはその後、悠々と戦力を落とした人間の国に攻め入れば良い。
すべてはドラゴンの王の考えた通りに進んでいる。
同胞の命すら駒にして、盤面を俯瞰し、手を打つ。
それが王の責務だからだ。
「それでも、少なくない被害が出る」
この戦いは、生存の為の戦いだ。
ここで人間に痛打を与えねば、後々の災いとなる。
一度放置した結果、ドラゴンは栄えた人間に絶滅寸前まで追い込まれた事があるのだ。苦い記憶で王の顔が歪む。
得られる報酬は特に無く、それでも仲間を犠牲にしないといけない。
分かっていても、それが辛い。
ドラゴンは、人間ほど簡単には数が増えないのだ。被害の重みが違う。他のモンスターをけしかけることで被害を減らすが、ドラゴンの被害はゼロにならない。
ドラゴンの王は、余計なことをした神々を強く恨んだ。




