「地下空間だけで自給自足が出来るようにするのが目標だからね」
新庄はチマチマと地下施設を拡充していた。
ゲームであれば天空都市を作ることも容易いのだが、この世界では空中建築ができないため、地下に活路を見いだしていたのだ。
それ以外のプランも存在するが、現在は地下がメインである。
地下だけで生活ができるように環境を整えている。
「わ、思ったよりも明るいのです!」
「ヒカリゴケの明かりだけだと辛いからね。そこは頑張って工夫したよ」
新庄は魔力式のランタンを作成しており、これをメインの照明にするようにしていた。
モンスターの魔石ではなく、新庄の魔力で灯される明かりは、そこそこの範囲を一日中明るくできる。具体的には、サッカーグラウンド4つ分ぐらいの面積だ。
魔石式のものもあるが、そちらは魔石の消費を考えると現実的ではないと考えられている。
「魔石の自動回収ができれば楽なんだけどね。
モンスター用のトラップタワーとか、そういったのは作れないんだよな」
「トラップタワー?」
「ゲームだと、モンスターはポップするものだからね。それを利用して、モンスターが湧く場所を限定して、水流とかで穴に落とし落下ダメージで殺して、ドロップアイテムを回収するんだよ。
ゲームみたいにモンスターがポップしないし、装置はモンスターを落下させていれば死体が積み上がるし壊れるし。ここじゃあ作るだけ無駄な施設かな」
ゲームならではのシステムは、現実には適用されない。
新庄はそれをとても残念そうに思い浮かべる。
モンスターがポップするなら、素材が無限に自動で入手できるのに、と。
鉄と金が何もしなくても手に入るなら、鉱脈探しもしないでいいのだ。この世界に来た理由であるモンスター退治も自動化が許されるなら、ギフトの維持も意識しなくていい。食料だって、勝手に増える。
新庄が抱える仕事の大半はやらなくても良くなるだろう。
それが許されない以上、全てはただの妄想であるのだが。
「現実はクソゲーです?」
「そうでもないよ。現実になったから出来る事もあるし」
ゲームがリアルになって出来ない事が出てきたのは確かだ。
しかし船の修理などで実感できたが、耐久力ゼロによるアイテムロストが無いのは良いことだ。
どのような状態であれ、壊れたものを修理できるのだから。
他にも現実に合わせてコンバートされたアイテムもあるので、どちらが良いと、一概には言えなかった。
だから良いところ取りを望むのは贅沢だろう。
「畑もありますねー」
「地下空間だけで自給自足が出来るようにするのが目標だからね。
と言っても、まだ、ちゃんとは育ってくれないんだけど。先は長いよ」
新庄は加倉井たちのチームに地下施設を案内しつつ、今後、追加する施設の事を考えていた。
「荻くん達にはいつ頃相談しようかな?」




