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砂漠の国の、引きこもり  作者: 猫の人
閑話⑤ アマゾネス
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「我々は、ドラゴンという脅威に対し、国の枠を越えて立ち向かわねばならない!!」

 王都襲撃から1年。

 新庄は、本人の視点ではあるが、穏やかな生活をしていた。


 トラブルで仕事で忙しくなる事はあるし、素材探しで遠方に出かける時もある。新庄の情報を得ようと密偵が動き回っているし、身の回りは安全と言い難い。

 しかし誰かに襲われるといった事件が起きておらず、襲撃以前に新庄やシドニーの予測した「我慢のできない貴族の暴走」などが発生していない。


 シドニーも、何かあったのに新庄に隠しているわけではない。それは加倉井や荻たちのチームも同じである。

 本当に手出しをされていないのだ。

 身構えていたのがバカみたいだと思うほどに、何もない。



「出た被害が被害だから、誰かが生け贄として何かしてくれないと、動けないのだろうな。

 事前の懲罰勧告だけであそこまで反撃したのだから、怖いのだろう。薬が効きすぎたのかもな」


 新庄による船の破壊は自衛のためだが、示威行為でもあった。

 船を破壊したのは兵士の運搬を妨げるのもそうだが、手出しすれば潰すと、敵を脅す目的もあったのだ。


 シドニーはそれでも暴走する考え無しが居ると思っていたが、そうでもなかったらしい。



 実際は一時とはいえ船が壊されたことを知った他国の干渉が原因で、新庄に干渉する暇が無かっただけである。


 この国は、ここで兵士を動かすと攻められかねない状況にある。

 近隣ではないものの、国交のある国が戦争状態や戦争の影響を受けているため、何かあれば戦争になりかねない雰囲気だったのだ。


 二度の世界大戦の引き金となったサラエボ事件のように、戦争が周囲を巻き込む事がある。

 地球とこの世界は国ごとの事情が全く違うようで、実は似た部分も多い。血縁や因縁で絡まった関係が同盟を作り、戦禍を広げることも少なくない。

 戦争の前線に出ない国の指導者が安易に戦争を仕掛けるなど、世界を隔てても同じなのである。





 そんなわけで平和だった新庄の周辺だが、その平和は一つの噂話で吹き飛ぶことになる。



「我々は、ドラゴンという脅威に対し、国の枠を越えて立ち向かわねばならない!!」


 世界各地で、ドラゴンによる襲撃が行われている。多くの国に少なくない被害が出ているらしい。

 そしてその報復のために、人間(・・)の国々が同盟を作ろうとする動きが出たのだ。


 この流れに、新庄も巻き込まれていくことになる。

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