「魚の骨も無限じゃないからな……」
新庄は木材が自由に使えない状況に危機感を抱いていた。
松明をはじめ、かまどの燃料など消耗していくので、木材の補充はかなり大きな問題だったのだ。
ゲームのように、木が数日で育つことはない。普通ならば、何年もかけて育つものだ。
そして枝を払えば苗木が落ちてくる等という都合のいい話もない。木材の入手は簡単ではない。
ただ、新庄にはギフトがあり、そのうちのいくつかはこの状況を打破する力があった。
「水と、砂、苔を合成。うん、苔でも土を作れるな」
緑化計画ということで、新庄は土を作った。
土は砂に色々と混ざった状態のものだ。クラフトで製作も可能である。
「魚の骨で骨粉は作れるけど……」
ゲームにおける「骨粉」は、植物を成長させるアイテムであった。主にスケルトン系のモンスターから入手するのだが、魚からも手に入る。なぜか動物からは手に入らなかった。
新庄は魚の骨を集め、そこから骨粉を製作。
骨粉から「白の染料」が作れることも確認してから、次の確認をする。
「上手くいきますように」
新庄は自分にギフトを与えた神様らしき存在に祈りを捧げると、骨粉を切り株にふりかけた。切り株と言ってもまた生きているので、成長する可能性は残っている。ほんの僅かな可能性に期待していた。
骨粉の効果は劇的だった。
ヤシの木の切り株、その根本から新しい芽が出て、そのまま一気に成長したのである。
あっという間に1mぐらいまで大きくなり、新庄の腹に届くサイズとなった。追加で骨粉をふりかけるが、そこからは成長しない。
元の木は5mはあった事から考えると、骨粉が成長させられるのは、ここまでということ。
新庄は残念そうに視線を落とすが、そこで地面の様子が目に入る。
新庄が用意した土が、砂地になっていた。
「土の水分と栄養が急成長の対価ってことか」
植物は光合成だけで大きくなるわけではない。他にも色々と必要なのだ。骨粉による成長加速をしようにも、土が無ければ不可能だった。
その後、土を入れ換え骨粉を使えば、ヤシの木はそこからも大きくできることが分かった。
元の木よりも大きくなることはなかったが、これは大きな成果である。
ただし。
「魚の骨も無限じゃないからな……」
必要とされる素材が木から骨に変わっただけとも言う。
骨の安定した入手方法は、まだ無い。
新庄の苦悩は続くのだった。