「ギフト能力者は死すべし。例外なく殺せ」
ドラゴンにとって、人間とはとるに足らない羽虫のようなものだ。いくら殺してもキリがない。彼らの感覚で少し経つだけで直ぐに増える。
そして自衛の枠を越えて人間を殺しすぎれば、世界に直接干渉しないはずの神々が手を出す理由となり、ドラゴンは一度、それで滅びかけたことがある。
なぜ神々は世界に直接干渉しないのかは、ドラゴンでも知らない。
ただ、経験則でそれを学んでいるだけだ。
特異な力を持った連中が歯向かってくるのは、その名残のようなものにすぎない。
どこかで誰かが遊び心から人間を殺しているので、その報復という事かもしれない。
ドラゴンたちはただ、無駄に争うのも面倒だと引きこもっているというのに、こうやって巻き込まれる。
「ギフト能力者を殺しておくだけならば、自衛の範囲であり、神々も干渉してこない。
他を多少巻き込んでも、ここで殺しておかねばまた仲間が失われるだろう」
ドラゴンは長命だ。
数千年の時を生きているものもいる。
種としての本能、生態、文化、思想の面からか、生きている時間と能力が正比例しているということはないが、経験からの学びは人類の比ではない。
神々の制約の範囲、そのギリギリを突く事もできる。
「龍人に指示を出せ。久しぶりの出番だとな」
ドラゴンは眷族の龍人に命令して、ギフト能力者の炙り出しと抹殺を行わせる。
ドラゴンが直接人の領域に出なくてもいいように、そのための戦力を用意していた。
命じられた龍人とは、見た目は人であるが、人ならざる種族である。体の一部にドラゴンの鱗が生えているぐらいで、パッと見て人でないと分かるのは、ギフト能力者ぐらいだ。
ギフト能力者はモンスターを見分ける能力を持っているが、龍人はそれを利用してギフト能力者を見付けるという発想から作られたのだ。
「ギフト能力者は死すべし。例外なく殺せ。
異世界からやって来たアレらは目立つからな。有名人で、モンスターを狩るような職に就き、過去を探れん奴がいれば、それがギフト能力者だろうよ」
龍人は、ドラゴンのように長くは生きられない。彼らの寿命は百と数十年だ。
前回のギフト能力者狩りを経験した者は残っていない。
龍人たちはドラゴンからの訓示をいただき、世界各地へ散っていった。




