「あー。飯が旨い」
彼らは、物産展で販売されるはずだった萌えキャラ限定グッズが欲しくて集まった集団である。
地方には、マイナーでも意外と出来のいい萌えキャラやゆるキャラが存在する。
そういったレアなアイテムにはコレクターが存在し、そこそこの値段で取引されたりもする。版権元、販売元が商売を理解していれば上手くプレミアで実際の価値よりも高くなるのだ。
そんなイベントでテロに巻き込まれたわけだが、ギフト能力、彼らにしてみればチート能力を手に入れての異世界転移である。そこまで不幸な展開ではなかった。
ただ、未開の、人が来た事も無いような、名も付けられていない森を選んだ事は、自棄に近い。
ネット環境を始めとする各種娯楽が無いのだからどこでも良く、むしろ権力者には関わられたくないからと人里離れた地域を選んでいた。
ギフト能力があるからなんとかなると、安易に考えたというのもあるが、老後まで見越して考えれば、とんでもない悪手だ。
ギフト能力は「モンスターを倒し続けなければ取り上げられる」のだから、戦えないほど高齢になったときは、能力を剥奪され、死ぬしかなくなる。
日本にも、「寝たきり老人になるくらいなら、さっさと死にたい」と考える人が一定数いるけれど、「死んでもいい」のと「死ぬしかない」では意味合いが全く異なる。
若いうちに選ぶべき事ではなかった。
先を見据えるなら、目標を立てる事はいいのだが、先の選択肢を潰すだけの判断はいいと言えない。
ここから逃げだした、離れていった者たちは、まだ現実が見えていたのだろう。
彼らの場合、男しか居ないというのも問題で、次の世代が存在しない。
ここにいるのは、一番年上でもアラサーで、30に満たない男だった。
趣味に金を使いたいからと、結婚なんてまるで考えていない事もあり、この場に女性が居ないことを軽く考えてもいる。
日本との環境の違いを正しく認識していない彼らは、この場の誰が欠けても致命的であると分かっていなかった。
むしろ、異性が居ないことを気楽であるとしか思わない。
人がなんで子供を作るのか、その意味を分かっていなかった。
新庄も同じ様な選択をしているが、新庄の場合はそれを理解しての判断であり、覚悟を決めていた。
加齢もそうだが、怪我や病気で孤独死する可能性を考えても、一人で生きていくつもりであった。
孤独を選んで出ていった者もそうだろう。この集団のような、状況に流された行動ではない。
「あー。飯が旨い」
「こんな所でも酒が飲めるっていいよなー」
圧倒的なまでの危機感の無さ。
これまでに上手くいったのだから、今後もなんとかなるだろうという、正常性バイアス。
そのツケを払う時は近い。




