「あー。ゴーレムを500、って所かな?」
荻たちが参戦を決意した。
その影響を受けて、加倉井たちも参戦すると言い出した。
この予想外の流れに、新庄は苦い顔をする。
新庄としては、どちらにも参戦してもらうつもりはなく、自分だけでどうにかできる案件だったからだ。
それに、荻たちはともかく、加倉井たちが戦いたいなどと言い出すのは考えもしていなかった。
人間関係は互いに影響し合うものだが、こんな時ぐらいは不干渉であって欲しかった。
「なら、モンスター狩りのペースを早めてもらおう。魔石の在庫を増やしてくれ。
あと、その素材を町に持ち込んでほしい」
そこで新庄が言い出したのは、後方の、兵站を任せることだった。
備蓄はかなりあるが、消耗したものを補充するのをお願いしたのだ。
普通、備蓄は倉庫を圧迫するので保有量は計画を立てて決めるものだが、新庄の場合は魔導書に保管できるので、適当に増やしても問題ない。
また、国と喧嘩すれば王都方面から来るはずの物資が滞るので、その代替として、モンスター素材の流通量を増やすようにする。
こういった配慮をすることで厭戦気分を払い、勝てる、大丈夫だという雰囲気を作るのだと加倉井や荻たちに説明した。
「えぇー。それだと新庄さんの負担がデカすぎない?」
「王都から少し離れた場所でゴーレムを作るだけの簡単なお仕事だから。こっちの負担もそこまで大きくないよ」
後方に回されると知った面々は不平不満を口にするが、新庄は参加する必要の無い戦いに彼らを加える気など無い。
どうしても必要なら頭を地面につけてでもお願いするが、今はその時ではないのだ。無駄に人を殺す事などなくていい。
新庄も直接戦わないと言って、宥めにかかる。
「最初は船を壊すだけだし、それなら使い捨てのゴーレムを500も用意すればなんとかなるだろう?
たったそれだけの仕事に、わざわざみんなまで付いてこなくてもいいよ。むしろ、一人の方が隠れるのに都合がいいから、まずは後方支援を頼むよ」
「いや、ちょっと待ってください。今、何て言いました?」
「あー。ゴーレムを500、って所かな?」
「材料は?」
「今回は石で作るよ。さすがに、鉄で500は無理だから」
新庄が計画の細かい部分を説明し始めると、全員が納得してくれた。
説明を聞いた彼らは、一様に引きつった顔をしていたが、それは新庄にとって些細なことである。
アイアンゴーレムと比べれば、脆く稼働時間の短いストーンゴーレムではあるが、一般的な兵士を相手にするなら、力不足とは言えない。むしろ過剰戦力である。
それを相手にしながら船を守らねばならない兵士たちに、荻たちは冥福を祈るのだった。




