「それとこれとは、話は別だ」
クラフト名物、フリーフォール。
要は、先に地面の下に空洞を作り、敵が来たら地面を掘って空洞に敵を落とす、ただそれだけの事である。
主に敵を殺さず捕らえるのに使い、その後は雷で帯電させたり同士討ちで限定アイテムのドロップを狙ったりする。
ただ敵を倒すならば非効率極まりないのだが、クラフトゲームのプレイヤーは実績と言う形で敵の倒し方に注文をつけられているのだ。
その実績のためにも落とし穴は重宝される。
しかし、今回の落とし穴は殺意に満ちている。
「砂、追加。
オマケに水も」
新庄は穴に落ちた奏の上に、大量の砂を配置する。
砂は重力に引かれ、奏を飲み込んでいく。
奏は衝撃波で逃げ場を作ろうとするが、砂は弾き飛ばしたところで、すぐにまた埋めに来る。抵抗には何の意味もない。
流れる砂に飲み込まれた奏は上下左右の感覚を失う。
そこに水まで流れ込めば、体を動かすことすらままならない。
水を含んだ砂は重く体にまとわり付き、体温まで奪う。
「こんな! こんな事ぐらいで!!」
奏は衝撃波で砂を吹き飛ばそうとするが、水により一つの塊となった砂は強固で、奏の衝撃波にすら耐えて見せる。
いや、上に向けて放った衝撃波はともかく、下に向けて放った衝撃波は地面を掘り進め、更に奏の動きを封じていく。
「嘘……。こんな、こんな終わりなんて、認め、ない……」
こうなってしまうと、奏に助かる手段はない。
もともと回復担当で、攻撃魔法は得意ではなかったのだ。選んだギフト能力が攻撃的なものであればまだ助かる見込みはあったが、タラレバの話に意味はない。
光の射さない地面の中で、砂と水の重さに潰されていく。
足掻こうと腕を伸ばそうとしても、それすら許されない。
指一本、動かせなくなっていく。
痛い、苦しい。
全身を圧迫され、息もできず、体が冷えていく。
死ぬ。
死んでしまう。
死にたくなくて、奏は回復魔法で命を繋ぐ。
奏の目から、涙がこぼれた。
助けてと、呟くことすらできなくなった。
人ではなくなった体はまだ死なないが、それも時間の問題。
このままなら、窒息して死ぬだろう。
自分は、そこまで悪い事をしたのだろうか?
薄れ行く意識の中で、奏は自問する。
反抗期からか、父親に反発して、傷付いたところに塩を押し込むような真似をした。
それは確かに悪い事だ。
だけど、こんな終わりを迎えるほど、それは悪い事だったのだろうか?
たった一度の過ちで、ここまでされなければいけなかったのだろうか?
新庄がそれを聞けば、こう返しただろう。
「それとこれとは、話は別だ」
奏が新庄を裏切ったこともこうなった原因だが、それが全てではない。全く別の問題だ。
新庄と親子で居続けていれば別の未来もあっただろうが、奏が魔王となったことに、奏の過去はそこまで大きく関係していない。
ただ運が悪かっただけだろうと、新庄ならそう言う。
ただし、これもタラレバの話に過ぎない。
何の答えも得ないまま、奏は意識を失った。




