第1話 なごり雪とカート・コバーンな北町先生
連載型です
学園モノのコメディーとやらです
どうぞ北町先生ワールドを堪能して下さい
あたしが通う私立南高校には北町という変わった先生がいる
変わってるってなにがって?
全部?
突然授業中にミロのビーナスの両腕のない美しさについて語って次の授業まで繰り越したり
時折学食の特別メニューで出る和牛サーロインステーキが、区内の高いレストランで出るステーキと同等とだと牛の原産地、育てかたの賛評からの話をホームルームで始めたり
とにかく変わっている
美術の先生?
いや、地学の先生なんだけど
第1話 なごり雪とカート・コバーンな北町先生
新学期が始まり2年生になったあたし
担任は地学の北町先生となった
先生が集め忘れたプリントを職員室へ持っていくと
窓際で北町先生がカップ片手に外を眺めていた
「北町せんせー、集め忘れてた修学旅行の保護者捺印のプリント集めてきたよー」
あたしは先生の元へプリントを差し出す
無言で5秒
き、気づいてない
「北町せんせーってば!」
あたしは少し大きめな声を出し先生の肩を揺すった
「うぉわぁぁっつpdjthgm」
聞き取れない言語を放ちながら驚く北町先生
意味不明な驚きよりも、この至近距離50cmで声を掛けられて反応しなかった先生にあたしは驚く
カップ落とさなくて良かったね先生
「お、おぉ渋谷か。すまんすまん、ちょっと考え事してて気づかなかった」
先生は我に返りあたしに気づき、プリントを受け取る
「考え事ってどうしたの先生?もうすぐアラサーなのに独身でどうしようとか?眼鏡止めてコンタクトにしようとか?」
あたしは軽口を叩いた
「近年は晩婚だから大丈夫だ。先生はまだ今年26だ、アラサー括りはやめてくれ。なんだか30が強調されてまだ過ごしてもいない4年を損した気分になる。
先生は割とメガネ派だからそれについても考え込んでなんかない。」
掌で眼鏡の端をくいっとあげて、定位置に戻す仕草を見せると先生は視線を外へと向ける
外?あー地学の先生だしなんかここの外の地質?でも気になってんのかな
「今一瞬だけどな、雪が降ってな」
成程、季節外れの4月の雪
みとれてたわけか
「謳い文句のようになごり雪が脳内再生されるだろ?でも先生はどっちかと言うとロック派でな、特にNIRVANAは大好きなんだ。儚い雪を見てると、現実とファンの理想の姿であるべきかどうかであったカート・コバーンの苦悩がどれ程のものが考え込んでしまって、、退廃的かつ、万人に支持を受けた彼のイデオロギーに近い(以下、割愛)と、言うわけなんだ。気づいたら職員会議が終わってて、明日本来話す修学旅行のオリエンテーション、ちょっとうちのクラスだけ明後日のホームルームになる、すまん」
この人、職員室でなにやってんの
北町先生は、変わっている
(続く)