眼鏡
眼鏡へ対する負のエネルギーをぶつけて書きました
オチがひどいですが、まあ笑ってやってください
しかし、何でこうも暗い話しか書けないのだろう…………
※暗い話なので、苦手な方はご注意ください。
※一部眼鏡をけなす表現があります。ご注意ください。
僕は外した眼鏡を橋の下へ投げた。
眼鏡はくるくると幾分滑稽に回りながら、
どどう、どどうと音を響かせる暗い谷川へ、消えていった。
眼鏡は嫌いだ。
買わされたその日に捨てることを望むほどに。
美しい物も、汚い物も、全てを、否応なくはっきりと見せてくる。
このくだらない、見たくもない世界が鮮明に見えたところで何になるのだろうか。
そんなことはない、世界は素晴らしいのだと反論なさる方もいるかもしれない。
だが生憎と、そこまで人格は出来ていない。
僕は輝く光の前であっても、影の暗さに目がつくように、どうしようもなく世界が憎むべきものばかりに見える人間なのだ。
何の意味もなく追従笑いする卑屈な顔。
根暗な僕を馬鹿にするように、快活にラケットを振るう人間達。
何一つ理解していないくせに、わかっているよ、と言う偽善者の笑み。
毎日毎日無意味で空疎な営み。
僕は心の底から鬱陶しいと思った。
だからといって、その毎日のルーティンに反抗するほどの反骨心や気力は持ちあわせていなかった。
しかして毎朝、ため息と世界への呪詛を吐きながら、重い体を押して学校へ通った。
だが、他人の作為的な姿を呪いを投げつけながら、僕はどこかで静かに理解していた。
自分の性格が捻れ曲がっていること。
自分は社会に不適合な人間であること。
そして自分が不必要な人間であることを。
ふと我にかえり、自分が物思いに耽っていたことに気づいた。
眼鏡は捨てた。だから、もうここにいる必要はない。
最後にもう一度、欄干から下へ眼鏡が落ちていった先を見ると、
ただ暗闇の向こうから、どどう、どどうと音が響いてきた。
明かりといえば、暗い木の葉の間からうすく零れる月光だけ。
そんな薄暗さの帰り道。
僕は急な斜面をつづら折りに上がっていく道をたどりながら、心の中の何かが抜け落ちたような感覚を感じていた。
僕にとって忌むべき、不必要なものを捨てただけだ。
清々した気分になってもいいはずだ。
なのに、この虚しさは何なのだろうか?
そんな問を頭の中でぼんやりと反芻しながら機械的に足を踏み出すと、
その先に地面はなかった。
激しく草をかき分けるような音と男の叫び声が夜の暗闇に響いた。
やがて、静かになり、後にはいつもと変わりのない夜があるだけだった。
明かりといえば、暗い木の葉の間からうすく零れる月光だけ。
斜めに傾いだ木々たちは風にざわめき、虫たちは高くはかない旋律を歌う。
どこからか遠くの方からどどう、どどうと音が響いてきていた。