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君しか見えない  作者: 影月かのん
5/5

入学式、お前と。

その日は朝から忙しくて。

流石に三阪も何もしてこなかった。

てか、手を出してきたら絶対キレてた。

……そもそも手を出さないのが普通じゃん。


着る練習とかしてたから初めてじゃなかったけどまだ綺麗で新品特有の馴染まない感じの制服に食堂でいつの間にか結構な頻度で一緒になる4人で朝飯を食ったあと、着て。


寮から学校に向かった。


そこまでは良かったんだよ。

別にちょっと余裕ができたのか三阪が目をギラつかせてたぐらい。

もう日常になりつつあって慣れてきてしまった。

人間の順応能力コワイ。



「え………マジかよ」


「やっぱ、あの本の通りにしといてよかったー」


「やった、これでずっと一緒じゃん!」


「つまんない時とかなさそうだなー」


上から俺、三阪、日向、香野。

お分かりいただけただろうか。


ーーーまさかの俺ら4人同じクラス。

てか、三阪。

本ってナンデスカ。

本当に本に書かれてたことが起きたんじゃないかって三阪を見てると思う。

冗談に聞こえないんだよなぁ。


で。


「うっそーん」


言いたくなるわ、流石に。

は行が多いクラスだったせいで出席番号の関係で俺と三阪は隣だった。

嫌すぎる。

どこまでコイツと一緒にならねぇといけないんだよ。


日向と香野は離れてたけど。

離れてるほうがあとが楽しみとか言ってた。

聞くんじゃなかったかも。

ここだけの話、俺の部屋と日向の部屋が壁を挟んで隣だから声が聞こえてくるんだよ。

普通の話し声なら聞こえない。


アレだ。


アレ。


どんだけ激しいんだよ。

もうちょい出る声セーブできるくらいにイタシテクレマセンカネ。

超複雑。

けど、なんか受け入れられてきたあたりで俺もだいぶやばいかも。


別に、三阪が恋愛対象になったわけじゃないけど。


「原田」


「え!?」


「プリント。回ってきてる」


なんか変なことばっか考えてたからボーッとしてたみたいだ。

三阪が声かけてくれてなかったら前の人ずっと俺のこと待ってたんだな。

ごめんよ、まだ名前も覚えてない人。


「ありがとな、三阪」


ちょっと三阪に礼を言うのは複雑だったんだけど。

こういうのはちゃんと言わないとな。


まぁ、すぐ顔を逸らしたけど。


「……………」


三阪は何も言わない。

せっかく人が礼言ったんだしあ、とかん、とか言えよな。


それから担任の先生の話を聞いたりして。

あっという間に入学1日目は終わった。


「ちょっと来て」


「は!?」


そして。

終わった途端手を引っ張られた。

荷物は忘れずに持った。

一瞬忘れそうになったけど。


引っ張っていった人物?

そんなの三阪しかいない。


校舎裏まで引っ張られた。


「さっきから何も言わないで何だ……ん!?」


3秒くらい。


強引なんだけど優しかった、多分。


キス、された。


唇が離れて文句言ってやろうかと思った。

思ったけど。


「原田が悪い。

 俺さっきからドキドキしっぱなしなんだけど。

 これ以上したら理性ぶっ壊れそうだから、先帰っといて。

 ちょっと外ぶらついてくるから」


バーっと喋られてたけど内容より俺は別のことに気が行っていた。


三阪が顔赤くして、少し睨むみたいに俺を見た目がなんか、色っぽいっていうか。


ーーーただ、純粋にドキッてした。


三阪が去っていったあとも暫くは俺も顔赤くしてその場に突っ立ってた。


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