幕間『無題の手記 〜序文〜』
この手記は、思いがけず弟子をとることになったため記すことを決めた記録である。
ここに書き記したものが、今後の気づきや記憶を引き出す取っ掛かりになることを願う。
弟子の本当の名は不明。
恐らく本人は知っているのだろうが聞いても答える様子がないため、我が師の指示に従い付けた名はヒューティリア。
由来は絵本『森の中のヒュー』より。名付けの理由は、挿絵に描かれている妖精・ヒューティリアとよく似た髪色と瞳の色をしていたからだ。
本人もその名に異存はないらしい。
すでに季節ひとつぶんの期間様子をみており、現時点でのものではあるが、その印象を以下に書き記しておく。
ヒューティリアの性質は決して大人しくはなさそうだが、だからと言って手がつけられないわけでもなく、むしろ十歳という年齢のわりに驚くほど自制がきく。
真面目で順応力が高く、知識欲も知識を吸収する能力も申し分ない。
師匠は拾ったと言っていたが、まるで魔法使いへの道を辿ることが決まっていたかのように才能にあふれている。
当初は人間の子供の面倒を自分が見れるのだろうかという不安もあったが、ヒューティリアに手を焼かされるようなことはほとんどない。逆に、人付き合いが苦手なこちらに対し、ヒューティリア側からの歩み寄りが大きいおかげで何とかなっているように思う。
一度感情を爆発させたことはあったが、あれは恐らくこちらの不手際があったのだろうと今でも思う。
今後そういったことを再発させないよう、また、いまだ原因を特定できていない自分が後々この記録を読むことで原因に気付くことを祈って、日常の些細なことから全て記すこととする。
いつになるかわからないが、この記録を終えるときにはヒューティリアも立派な魔法使いとして独り立ちしていることだろう。
そこまで導くことができるのか不安ではあるが、その日が来ることを願って、この記録を残す。
セレスト=ルゼルシス




