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〜日常は突如非日常に〜
新学期。夏季休業の終わりの寂しさと再び始まる日常の喜びを噛みしめる。・・・はずだった!
日常は突如姿を消した。その代償に現れたのは見慣れた校舎の見慣れない迷宮だった。
水神 英雄は入学式という言葉が嫌いだった。親から背負わされた名前の重みにいつも苦しめられていた。そういうのもエイユウは何一つ人より優れたものを持っていなかったのだ。「あののび太ですら特技があるのに。のび太って名前の方がまだマシだ」というのが彼の口癖だった。高校に入っても名前と自分のギャップをいじられることは覚悟していた。そこでエイユウは誰とも関わらずに卒業するつもりでいた。
入学式当日・・・呼名の時間がやってきた。
「水神 英雄」「はい」
クス クス・・・
エイユウは自らに浴びせられる好奇な目線に気づかないふりをしていた。いや、そうするより他になかった。
「宮園 未来」
微かなざわめきは沈黙に変わった。エイユウも耳を疑った。その出会いはその後、二人の運命を大きく動かすのだった。