7. 日曜午後のメッセージ
『てん君が昨日はごめんって……つば嬢と万路のみんな、今日は休んでて。何かあったら、うちから連絡する』
朝一番であみが寄越したメッセージにはそう書かれていた。
『了解です』
大町は返信し、毛布にくるまった。ラジオでの天気予報によれば、今日は平年を大幅に下回る寒さだそうだ。
再び起きたのは正午過ぎ。両親も姉妹も出払っていた。
(クラスの奴に聞いたとこ行ってみるか)
大町は適当に着替え、財布とスマートフォン、鍵だけを持って自宅を出た。
青葉区内に建つお目当てのラーメン屋には既に行列が出来ていた。
(みんな同じ事考えてんなー)
およそ20分後、カウンター席に案内された。メニュー表をざっと見て看板メニューを頼んだ後、椿からのメッセージに気付いた。
『椿と万路のみんなで集まらない? 15時に泉中央駅集合で』
『良いよ!』
返事を送り、現在地から泉中央駅までの経路と料金を調べた。まっすぐ行けば余裕そうだ。
ラーメンが運ばれて来ると、熱い内に貪った。
「兄ちゃん、良い食いっぷりだねぇー……大町っ」
朝葉だった。彼女は一人で来たようだ。
「つば嬢のメッセージ見た?」
「見たよ。僕は行くけど……朝葉さんは?」
「あたしも当然行くさ!」
「んじゃ、一緒に行こっか。場所は調べたけど知らないとこだし」
「あいよ」
食後、大町は店近くの自販機でカフェオレを買い、それを飲んで朝葉を待つ事にした。そこに宮町からの電話が入った。
「もしもし」
「あれからどうだ? 全然連絡なかったけど」
「あー……例のあれは別にどうって事ないよ。それより実践教養コース、思ってた以上にきつくてさぁ」
「そうか……ま、がんばれ。何かあったら連絡くれよ?」
「うん」
「それと、その……朝葉さん、元気か?」
「うん、めっちゃ元気」
「よろしく言っといてくれ」
「はいはーい」
通話を終えて少し経つと朝葉が店から出て来た。
「お待たせー」
「おー。あ、そうだ、宮町君がよろしくだって」
「へーい。んじゃ、行くかぁ」
約束の時間には間に合った。天気が悪いので近くのカフェに移動した。
大町らの周りには大人の女性ばかり。しかもどの人も上品そうで、飛び交う会話の次元も違う。
「椿さん以外場違いじゃないかな」
「大丈夫。そろそろ椿達ぐらいの子他に来るよ」
「そ、そうなの?」
「うん」
椿はこの場所に慣れているのか、非常に落ち着いていた。やがて彼女が言った通り、他校の女の子達やカップルが出入りし始めた。
椿おすすめのミルクティーを飲みながら、元1こと祀陵高校旧2年1組について喋った。全員、今朝のあみからのメッセージを最後に、彼女らとの音信は途絶えていた。SNSを見ても、昨日から今朝以降更新されていない。
「それにしても……てん君があんなに怒ったの初めてだよ。正直ちょっと怖かった」
「だってよ、文丸」
「ご、ごめん……」
朝葉が文丸を横目で見た。
「良いの。何か、理由あると思うから……あっ」
椿はスマートフォンを取り出した。
「あみちゃんから……椿達の事、犯人さんにバレたって」
あみのメッセージによると、先日不審者と遭遇した事に加え、サスペンス愛好会が元住居に突入し損ねたせいで椿と、大町ら宮城万路高校生が元1に協力している事が知られたそうだ。
「あいつら……」
朝葉が声を震わせた。
その後、あみから居場所を聞いた天馬が椿を迎えに来た。
「てん君……」
「椿さん、心配ばっか掛けて……本当にごめん。送ってくよ」
「うん」
二人を見送った後、大町らもその場で解散した。
【宮城県祀陵高校】
中江あみ
2年1組→3年1組・ダンス愛好会
年上の彼氏が居る、お喋り好きな子