44. 最後の夏 疑問
27日、朝の時点で共継父娘は依然逃走中だ。
大崎市東部の住宅街に心未と元倉が居た。二人の目先にあったのは世間並みの一軒家、その表札にはこの辺りに多い姓が刻まれていた。しかしそれは偽名であって、ここは正真正銘共継家の邸宅だ。
「仙台行ったっきりだね」
「そのおかげで冬美さんは無事、親戚んとこ行けたけど……避難したってのはバレたんだっけか」
「うん、他校に行った子が冬美ちゃんママに聞いてって頼まれたみたい。その子、本当の事知らなくて、ココが話したら真っ青になってた」
「そりゃなるわ。けど、しょうがない。俺だって心未さんとか、下川原さんとかに教わるまで知らんかったし」
心未と元倉は魅阿について語り合っていた。彼女は以前から、彼は妃美達と一緒に、尚進探偵団に参加していた。
「お姉さん達の命日しあさってなのに……これじゃ冬美さん、何もしてやれねぇじゃん」
「そうだよねぇ。もう復讐はしないって言ってたみたいだけど、そんな時にこれはないよ」
心未は嘆息した。冬美が気の毒でならなかった。
「……って、やべっ! 電車来る!!」
「えっ!? 急がなきゃ」
元倉と心未は数百メートル先の駅まですっ飛んで行った。これから各自、部活動とアルバイトがあるのだ。
元倉属する野球部がウォーミングアップを終えた頃、課外授業を受ける進学希望の生徒達が登校してきた。
理依は尚進探偵団メンバーでもある友人達と講義室に入るやいなや、遊び好きそうな女子に鋭く睨まれた。
「マジ無能だわ」
「そりゃそうでしょ、祖志継とお友達だったもん」
聞えよがしに妙な事を抜かしているが、理依はそれを無視した。
「祖志継違いだっつうの」
仲間の一人、あゆむが反撃してくれた。
「澄那は別だかんね」
「一緒だし! 親父殺そうとしてたっしょ!?」
女子のリーダー格が食って掛かった。そこを突かれると、どう反論すべきか悩んでしまう。背景を考えると同情の余地はあるが、殺人未遂を肯定する事になるからだ。
「ま、まぁ……答えがない問題ってのも、あるしね」
理依はうまく取り繕って、女子達をおとなしくさせた。
「理依……さっき思ったんだけどさ」
あゆむにも気になる点があったようだ。
「澄那と、祀陵のみかんって子は親戚みんなおかしいと思って離れたんだよね?」
理依が頷くと、あゆむは質問を続けた。
「それなのに、何で後から追っ掛けて来たんだろ。仲間に混ぜた所で、合うわけないのに」
理依ははっとした。
仙台末娘事件はみかんを連れ戻すために引き起こされた。理依達が幼い頃、その犯人が澄那の家族に絶縁を考え直すようと迫っていた。
「あたしにも分かんないや。どうして、あんな良い人達を……」
理依が知る限り、祖志継家の血族ながら良識的な人物は澄那とその両親、みかん母娘だけである。そんな人達を、なぜ? 新たな疑問が生じた。
夕方、岳は広瀬川沿いを走っていた。いつもは一人だが、今回は菊田も一緒だ。
千代大橋を超えた所で一休み。スマートフォンを見ると、矢遣団のチャットルームに各方面、異常なしとのメッセージが入っていた。
「今日も大丈夫だったな。俺が返しとく」
「おう」
岳も一言送信した。
『俺らのとこも問題ないっす!』
『岳あざっす! そういえば、夕陽さん知らない?』
陸に尋ねられたが、知る由もなかった。夕陽が学校を休んで以降会ってないのだ。
『全然ですね……地元じゃどうなの?』
『日中は居ない。家すぐそこだから、始発で家出て、終電で帰って来たとこなら1回見たけど』
『どこ出掛けてんだろうな』
『それが分からんのよ』
夕陽の行方に関しても仲間内での疑問となった。
「夕陽さん、どこで何してんだろ……戻るか」
「あぁ!」
岳と菊田は道を引き返した。
【宮城県大崎尚進高校】
薬師堂心未/ココ
総合学科商業経済系列2年4組→3年4組
ソフトテニス部
天然な女の子。下川原とペアを組んでいて、友達や顔見知りが多い
元倉満風
総合学科商業経済系列2年4組→3年4組
野球部
さっぱりとした野球少年。クラスのまとめ役で、妃美達と一緒に尚進探偵団に加わった
蛭沢理依
総合学科環境科学系列2年2組→3年2組
科学部
ダンスも好きな理系女子。下川原達の幼なじみで、クラスでは噂好きなグループに属する
西勝あゆむ
総合学科地域国際系列2年1組→3年1組
生徒会
サバサバした性格。同校・他校の友達を大切にしており、澄那が1番の親友だった
【祖志継家関係者】
祖志継澄那
分家
大崎尚進高校→退学
常識人で、両親共々祖志継一族とは縁を切っていた。あゆむとは大の仲良しで、下川原達の幼なじみの一人。冬美の非難を受け、父親に毒キノコを食べさせた事で逮捕された




