3. 悪魔の家
17日。引き続き、楽司らの捜索が行われた。
大町と文丸、朝葉は愛子駅付近で聡太、芋沢、星陵と落ち合った。
「そっちは?」
「全然! 他の所も手掛かりないって。そうなるとやっぱり市外か……だとしたらどこだよ、ったく」
聡太はイラ立っているようだ。
「そうそう! 男子が言ってたんだけど、ヤバイ廃墟あんだって!」
「昨日何人かで行って来たんでしょ? うちのクラス、先生が話聞いて注意してたー」
女子高校生が歩きながら喋っていた。
「つーか、肝試しやんの早くね? ……でさでさ、その家、だったかな。始業式あった日の夜から怪奇現象起きてるんだって」
「えー!? そこまで聞いてない、どんなのどんなの!?」
「誰かが、出してくれーって叫んでるんだって。中から無理矢理開けたいんだか、ガチャガチャうるさくしてる時もあるとかないとか……で、それ、誰にでも聞こえるらしいよ。男子もみんな聞いたって」
「えー、そこまで!? 怖っ! ……って、あれ?」
女子高校生の内、一人がこちらを見た。
「芋沢先輩!? おひさしぶりです!」
「おぉ、ひさしぶり! この子、バスケやってた時の後輩……そうだ、今言ってた廃墟、どこにあるか分かる?」
「山形の手前ら辺、みたいですよ! 〝悪魔の家〟って表札が目印だし、そう呼ばれてるって言ってました」
「悪魔の家、な……ありがと」
「いえいえ! それじゃ」
後輩は友人と一緒に帰って行った。
「帰ってもう少し調べよっかな」
芋沢が呟くと、一同はその場で解散した。
翌日の昼休み、大町と文丸は学生食堂に来ていた。
「悪魔の家なんだけどさ……芋沢君が調べた話だと、例の現象起きた時から、日中だけ人が出入りしてるんだって」
「怪しいね」
「だろ? 聡太君も、時期的に錦ヶ丘君達と関係ありそうだって。でさ……今日、行ってみない?」
「うん」
大町は文丸の提案に乗った。
放課後。二人と朝葉、星陵は悪魔の家を訪れた。聡太と芋沢は部活だそうだ。
「……ただの空き家じゃん」
大町が見る限りそこは、名前から想像していたおぞましさは一切なく、噂の声や人の出入りもない、家具などが放置されているだけの空き家だった。
「もう何も起こんないぞー」
近所の男性が出て来た。
「噂になり過ぎて、変なの上がり込んだから日中居る人もう来ないって。それから声も止んだよ」
「そうだったんですか……」
大町は男性の話を聞いた後、悪魔の家をその場から撮った。
「何か写った?」
文丸達と、男性も大町の写真をじっくり見た。
「……何もないですね。怪奇現象とか言ってる割には」
写真には幽霊どころか、オーブすら現れていなかった。
「よくある噂でも出回ったんだろうな……何だったっけか、前ここに住んでたじいさん、ちょっと変わった人だったんだよな。それでかなぁ」
男性が悪魔の家の実態を言いかけた。
「おじさん歳だから、忘れちまったよ。ごめんなー」
「良いんですよ。どんな所か分かったんで大丈夫です、ありがとうございました」
星陵が男性にお礼し、一同は来た道を引き返した。
「関係あると思ったんだけどな……僕も、聡太君も外れ」
文丸は少しがっかりしているようだ。
「それにしても……大町、廃墟好きなの?」
「うん、好きだよ」
「確かに良いよな……あ」
星陵にメッセージが届いたらしい。
「『気になるの見つけたから、ヌカボシで話そう』って……同じ学校の奴から」
その話を聞き、大町らはさっそくヌカボシへと向かった。
【宮城県祀陵高校】
宮町聡太
2年1組→3年2組・映画部
中二病気質の法律オタク
芋沢啓希
2年1組→3年2組・ハンドボール部
まじめコンビの、バスケットボールも出来る方
星陵翔馬
2年1組→3年2組・生徒会
まじめコンビの、チアガールが好きな方