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大町編  作者: 麦果
第2章 石巻浦見台高校
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26. 現場から 退場



「ごめんっ! 匿って」

 昼休み、石巻浦見台高校3年6組に須江、竹浜と相野谷、伊原津が転がり込んだ。

「わ、分かった」

「こっち来な」

 未衣亜(みいあ)芽李(めり)が4人を教室の奥に連れ込むと、柄の悪い男子生徒が5人押し入った。上靴の色は赤、2年生だ。

「お前ら、ちょっと落ち着け」

「何か用あんなら、俺達が聞くぞ?」

 中埣と南境が後輩の前をふさいだ。

「どいて下さいよぉ!」

「須江先輩の本持ってかなきゃあ、俺達がシバかれるんですぅ!」

「どういう事だ、それ?」

 南境は興奮する後輩を落ち着かせ、事情を聞いた。

 彼らは暇潰しで祖志継家の誘いに乗った。しかし、頼まれた物をなかなか奪えず、今日失敗したら罰を与えられるそうだ。

「脅しじゃねぇか……」

「6組どうした!?」

「鮎川!」

 鮎川と5組の女子達が様子を見に来たので、南境は彼女らに後輩の事を説明した。

「それなら、こいつら全員おっちゃんの所に連れてって。あたしも行く」

「分かった」

 南境と鮎川、中埣、灯樹と主門が後輩を連行した。

 校長室にて桃生へ事情を話し、後輩はこれまでにも本を強奪するため須江に付きまとっていた事を認めた。彼らは別室へ移動し、自分達の先生との面談に望んだ。

桂果(けいか)ちゃんから、ちょくちょく話は聞いていたんだ。これも警察に報告しておくよ」

「おっちゃん、任せたよっ」

 こうして、石巻浦見台高校における偽装ボランティア問題について、鮎川達から桃生へ、そして警察へと委ねられた。


 片や祀陵高校にて、教員二人が羽依花と好夢の話を聴取していた。

 彼女らは自分がやった事を素直に認め、手紙の内容やその趣旨を理解した上で祖志継家に協力したと供述した。

「分かってたのね……だったら、何でこんな事したの? これを頼んだ人がどんな人か、知っているでしょう?」

「止めてもらいたかったからです」

 堤通(つつみどおり)に対し口を開いたのは好夢だった。

「祖志継家が絡んでる、って分かれば、元1の、富彦(とみひこ)君が止めてくれるから」

「それで……西(にし)さんはどうなの?」

「好夢のためです。うちが最初に言いました、塩柄(しおがら)が気付くかもよ、って」

「貴女も……そんな事した所で、何の意味もないし、むしろ逆効果よ」

 堤通は好夢と塩柄の事を知っていた。二人が交際していた頃の彼女の振る舞いが、近年問題になっているデートDVに該当するのではないかと当時の副担任や級友達が懸念していて、男子故に声を上げにくい彼を心配していたのだ。

「これで、自分がした事が分かったでしょう?」

 羽依花も好夢も腑に落ちない態度だった。

 堤通が校長や教頭にこの結果を伝えると、直ちに二人それぞれの保護者が学校に呼び出された。


 14日の夕方、勉強中の菊田に山下が電話を寄越した。

「悪いねぇ。そっちどうなった? タメの奴二人程やってたって聞いたけど」

「あぁ……二人共、退学だってよ。反省とか全然してねぇみたいだし」

「うわー。こっちは今んとこ無期停学」

「そっかぁ。確か俺ん所と浦見台だけだよな、やった奴居たの」

「そうだよ。尚進と万路はみんなスルーしたって」

「なら良いんだ……そうだ、万路っていえば、サスペンス愛好会だか何だか潰れてどうなったんだ? 連絡取ってないし、同中居るけどあんま仲良くなかったから、分かんねぇんだわ」

「確かに……例の偽装ボランティア無視した以外に何も聞かないからなぁ」

「マジかー」

 菊田は宮城万路高校の仲間達を思い浮かべた様子で、テストや猫の事を喋った後、スマートフォンを置いた。

【宮城県祀陵高校】


塩柄富彦(しおがらとみひこ)

2年1組→3年1組・軟式野球部

凡人的だが自由な毎日を楽しんでいる男の子。好夢に別れを切り出した元彼



【学校法人秀堂学園石巻浦見台高校】


月橋未衣亜(つきはしみいあ)

総合コース2年3組→3年6組・映画部

強気で言い負かすのが得意な姫ギャル。元おしゃれ系グループ


二本松芽李(にほんまつめり)

総合コース2年3組→3年6組・映画部

強気で言い負かすのが得意なサーフ系女子。元おしゃれ系グループ

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