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大町編  作者: 麦果
第1章 祀陵高校
13/84

12. 未解決

『仙台・高校生失踪、7人全員無事保護――7人は現場となった廃屋を訪れていた20代男子大学院生とその友人の協力で保護された。警察では被害生徒らの証言から、12年7月に発生した仙台末娘事件加害者の親族による犯行と見て、引き続き捜査を行う方針だ』

 失踪事件について、24日付の朝刊にはそう記されていた。

 新聞と睨み合う大町を、姉が心配そうに見つめていた。

「あんた、やっぱ熱あんじゃない?」

「失礼な、こちとら平熱だい」

 それでも姉がうるさいので目の前で体温を測って見せた。36度ちょうど、問題なし。納得してもらえた所で登校した。

 教室のドアを開けると、クラス委員の女子生徒がこちらをにらんだ。

「ピンピンしてるじゃない。やっぱり仮病かしら?」

「いや、帰って寝たら治っただけだよ」

「あっそ」

「こらこらー! 大町は病み上がりなんだぞっ!」

「大事を取って帰ったのにこれかよ、堅物めっ」

 ギャル二人が乱入すると、クラス委員がたじろいだ。

「大町!」

「ほら、季杏さん呼んでるよ。行ったげて!」

「うん」

 大町は女子に促され、季杏に駆け寄った。文丸や朝葉、いつものメンバーも一緒だ。

「みんな居た家さ、全部、去年捕まった人んちだったって」

 季杏によれば〝祖志継〟の表札が残った家はもちろん、悪魔の家、廃マンションも全て仙台末娘事件加害者の元自宅だったそうだ。

 その後普段通りに始業時間を迎えた。曰く付きの廃墟にまつわる噂話も、女変質者の目撃情報も一切入らない、数日ぶりの穏やかな1日だった。


 放課後、大町と季杏はヌカボシでくつろいでいた。店内では他に八幡が手伝いを、楽司ら2days+のメンバーが生演奏をしている。

 そこに祀陵高校生二人が転がり込んだ。奏が彼らを同じクラスの東照(とうしょう)梅子(うめこ)と紹介した。

「二人共そんなにあわててどうしたの?」

「3年生に、ってこんなのもらったんだけど……」

 梅子が奏にCDを手渡した。さっそく再生してみると、音楽とは言いがたいリズムの電子音が流れた。

「これ、モールス信号じゃないかな?」

 錦ヶ丘がそれを聞き取っては、プリントの裏に点と横棒を書き連ね、ネットを頼りに解読した。

「……とんでもないの出て来たよ」

「どれどれ?」

『THUGIWAURAMIDAIMATAWASYOUSHIN』

 アルファベットが並んでいるだけのようだ。

「ローマ字で読んでみて」

「『つぎわうらみだいまたわしょうしん』……次は〝うらみだい〟または〝しょうしん〟!?」

 八幡は意味も分かったようだ。

「マジかよ!? お、俺〝うらみだい〟に同中居るから言っとこ」

「うちも〝しょうしん〟の子に教えなきゃ」

 狼狽する祀陵高校生達を見ているだけの大町に季杏が耳打ちした。

「〝うらみだい〟と〝しょうしん〟でまた何かあるかも、ここまで来たら付き合わされると思う。うちらも文丸とかに言っとこ」

 大町は季杏に同意した。


 そういえば失踪、もとい監禁事件の犯人達も捕まってはいない。その正体とされる祖志継家の関係者、そして聞きなれない学校名――探るべき異変はまだ続くようだ。

【宮城県祀陵高校】


東照星輝(とうしょうほしき)

2年2組→3年1組・軟式野球部

他校にも友達が何人か居るらしい


千手寺梅子(せんじゅじうめこ)/うめ

2年2組→3年1組・ソフトテニス部

好奇心旺盛かつ行動的で、校内外に多くの友人が居る

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