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人狼の森  作者: えもじ
3/3

1、瞳の綺麗な女の子

主人公:アリシャ

今日は獣肉祭の一日前。

この前のことは忘れられない。

ずっと暮らしてきた親友が、あんなことになるとは。

あんな話、聞いたことがない。

村の伝記にも、載っていなかった。

図書館のすべてを探しても、「人狼」なんてなかった。


きっと、家に行ったら居てる。

あの人は。

ルーラルは、きっと。



私は家を出て、前にある村の中で一番大きい道路を右に曲がる。そして二つ目にある右側の路地に入って、三軒目の家に着く。

ここがルーラルの家だ。

結構近い。



木製のドアをノックすると、おばさんが出てきた。

なんだかやつれている。

ルーラルは・・・

いや、だめだめ。こんな勝手な妄想。

あれは夢なんだから。絶対に。

蜘蛛は喋れないし。

狼だって喋れない。


「入って」

優しい声でおばさんが言う。

「ルーラルがいないの」



・・・。

「そう・・・ですか。いつからです?」


どうか。

この前からって言わないで。

お願いだから。


「この前からなの。森に入ったっきり帰ってこないわ。アリシャちゃん、何か知らないかしら?」


勿論、狼になったとは言えない。

言ったところで信じてもらえない。


「途中まで一緒でしたけど・・・確かに、いませんでした」

とっさに口を突いて出てくる嘘の単語を並べる。

いないんだ。


「そう・・・。一応村長にも言っておいたから、なんとかなるわよね。安心して待っていてね、アリシャちゃん」


「わかりました。私も探してみます。そんなにお気に病まないで、安心してください。おばさんの方が」


「ふふふ、アリシャちゃんは気づかいがいいわね」


さようなら、と言ってからそそくさと立ち去る。



いない。

ルーラルがいない。

どうしよう。

彼は狼になったんだ。

あれは夢じゃなかった。



わたしは。


私はどうすればいいのかわからない。


あの女の子にもう一度会いにはもういけない。


どうすれば・・・




「アリシャちゃん」

誰かが声をかけてきた。

「どうしたんだよ、そんな辛気臭い顔しちゃって」


村長だった。

「こんにちは、村長さん」

「こんにちは」

ひとまず挨拶。


「アリシャちゃん、これ、出てみない??君に合ってると思うんだけど」

一枚の紙。

チラシだ。


・・・。

「獣肉祭の巫女?!そんな怖いもの、でるわけないじゃないですか!!」

「まあまあ、そんなこと言わずに。毎年何もないだろう?ほかのとこはちょっとやばいらしいけど」

「だから嫌なんです!四大陸の内三大陸の巫女が失踪、行方不明ですよ?!」

「ここはまだだろ?」

「まだだから、来るかもしれないでしょ!出番が!」


そう。

四大陸の四つの国々・・・といっても小規模だが、一大陸につき一人、獣肉祭の時に祈る巫女が選出される。

そして、四年前から、タンダ、マドワ、シンカラの順に(オルフから遠い順に)巫女が失踪し、未だ見つかっていない事態に陥っている。

そして、どこの誰かもわからない者が、一緒に消え、遺体となって見つかった。

怖い仕事なのだ。

最初はただのでまかせだと思っていたが、本当に新聞になって全四大陸に知れ渡った。

それでも年に一度は決めなければいけない巫女。

巫女は、大陸の中から一人だけ、瞳の一番きれいな者が選ばれる。

男でも、女でも。たいてい女だが。


村長は、それに出ないか?と提案しているわけだ。

もう今となっては、目が綺麗でも、液体を入れて一時的に目を濁らせる人もいる。

だから、出願人数はゼロなのだ。

死にたくない、という生きるにおいて大前提である願望が、脳を遮るのだ。


「アリシャ、出るんだね。ありがとうな!」


へ??


「ちゃーんと、指印もらったから!!」


・・・は??!


「えっ・・・どういう」


「君がぼーっとするのが悪いんだよ!」



というわけで。

出願させられました。







夕方、選出通知が来た。


「今年の祈りの儀は、オルフペオで行うとする。巫女は、各地域にある台座で祈る。健闘を祈る。だって」


「よかったなあ!!」

「何がいいんですかあああ!!!」

「いいじゃん、村が活性化するぜ!!生きてたら、お前を村長より高い位につかせてやるぞ!!」


「健闘を祈るって、おかしいじゃないですか!ただ単に女神さまに祈るだけですよ!?なのに、おかしいじゃないですか!」

「風邪、病気のことだと思っとけ。よかったな」


最後に送る言葉みたいな感じで「よかったな」って言われても。

村長結構嫌な人だなあ。


















とうとうやってきた、私にとっては死ぬ日。

獣肉祭。

楽しい獣肉祭だったはずなのに・・・

昔だって、ルーラルと・・・




って、あれ・・・


なんで・・・


なんで小さい頃の記憶が微塵もないんだろう・・・

不定期です。一か月空くこともあります。

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