万能なカギ
泥棒である男が仲間にカギを見せて言った。
「これは苦心の末、やっと完成した万能カギだ。このカギさえあれば、この世のどんな物でも開ける事が出来る」
男の説明に、仲間は「そんなバカな話があるか」と疑う。
「お前が疑うのも無理はない。百聞は一見にしかずだ」
と、男は大小様々な金庫を用意し、万能カギを使い全ての金庫を開けてみせた。
「これは凄い」
驚く仲間に男は言う。
「カギの凄さがわかったようだな。つまり、俺達に盗めない物はないという事だ」
二人はさっそく犯行計画を練り、かねてから狙いを定めていた富豪の邸宅へ、万能カギを使い侵入した。
しかし、金庫の前までやってくると、ふいに男は動きを止めた。仲間が男を急かす。
「おい、何やっているんだ。早く金庫を開けろ」
仲間のその言葉に答えるように、最新型の高性能金庫が音声で指示した。
「指紋認証ヲ行イマス。人差シ指デ、読ミ取リ画面ニ触レテクダサイ…」
仲間は全てを理解し、男は悔しげに呟いた。
「カギ穴がなければ、カギなど意味がない…」