嵐の後
「漠然としすぎていて話が見えてこない」
俺はめげずに再度抗議の声を上げた。全校生徒の憧れ、生徒会長がこんなカルトな集まりを創設したとは、にわかに信じがたい。
隣の江崎にも同様だ。根っからのスポーツエリートゴリラ、それが俺の認識なのだが。さらに背中から無駄に抱きついている妹も、そうだ。こいつはおしゃれが好きでクソ生意気なやつで、オカルトにはまっているようすなど皆無だった。
「すぐに分かることになるわ、慌てなくても」
会長は怪しく微笑みながら手荷物をまとめ始めた。
(?)
「今日強行するのは止めたほうが良さそうね、江崎さん、加奈ちゃん、また日を改めましょう」
「わかった」
「うん、バイバイ」
入り口そばで団子になっている俺たち3人を器用にかわし、会長は1人先に帰ってしまった。
「じゃあ私も」
ようやく江崎が俺の手首を放した。しかもうっすらと痣のようになってしまっている。間違いない、やはりこいつはゴリラ・ゴリラだ。
残されたのは俺と妹の2人だけだ。
しかし冷静に考えるとカラオケボックスで妹に後ろから抱きつかれているのは、かなり社会的にアウトではなかろうか。
「なあ、いつまでそうしてるんだよ」
「いくつか注文があっから」
どうやら、ただ単に身動きを封じる、というのが主目的だったようだ。
この際言わせてもらうが、実の妹持ちで妹萌、なんていうのはよっぽどの変態しかいない!2次元では妹萌とか義理の妹とかもてはやされているが、あれは完全なフィクションだ。想像してほしい、自分のオカンに対して欲情できるか?それと同種のものなのだ。
いや、確かに一部の特殊かつ少数は、オカンや妹をそういう対象に見れるのかもしれないが、そいつのネジはかなり吹っ飛んでいる、ということだ。
話がそれた、俺は視線で続きを促した。
「今日4人が集まったことは誰にも言うな。先に帰るから時間を開けて会計済まして」
「もしバレたら」
「殺す」
物騒な捨て台詞を残して妹も部屋を後にした。
「わけがわからん」
独り取り残された俺は、悪友からの遅刻を非難するLINEメッセージにどんな言い訳をするか、しかたなく考え始めたのだった。
次回、明日3/17午後8時10分投稿予定