メンバー加入
なるほど、どうやらカラオケボックスをオフ会の場として使っていたらしい。しかも本来の用途、カラオケを行うこと以外で。だが待って欲しい、会長と江崎は同じクラスだし、江崎と妹は同じ高校の柔道部だ。江崎を介して3人が知り合っても不思議はない。なぜこんな真似をするのだろうか。確かに品行方正で通っている会長が、学校帰りに立ち寄りを禁止されているカラオケにいるのかは謎が残るわけだが。
「まるでわからん」
俺は振り返りぎみに背後の妹に助けを求めた。
だがこの場唯一の肉親は俺を助ける気はさらさらないようだ。その笑顔を俺は知っている。兄弟(?)喧嘩をした時、自分の圧倒的有利を確信してみせる、アレだ。
「秋元君を私たちIWN最初の男性メンバーとします」
会長のその言葉が何故か死刑宣告に聞こえた。
「少し待って欲しい、IWNってなんだ?わけのわからないものに参加するつもりはない」
気押されながらも反論を試みた。
「ごめんなさい、これはお願いではなくて命令なの」
「……」
「折れる、折れるから!」
いつから会長から女王様に転職したのか、そんな彼女の豹変ぶりと隣のゴリラ女の説得(物理)には虚勢など無意味のようだ。
「分かりました、なんでも言うこと聞きますから!」
「よかった、これで兄貴もメンバーだね」
後ろから無邪気に抱き付いてくる妹に俺は言い知れぬ恐怖を感じたのだった。