始まり
「そう、なら生きては返せないわね」
黒髪ロング、クラスメイトにして麗しき生徒会長、新垣あやめから、ぞっとする言葉が吐きだされた。普段の彼女からは想像すら出来ない。
「どういう意味だよ」
「……」
反射的に腕を振りほどこうとする。だが隣の悪魔、もとい、この場にいるもう一人のクラスメイト、江崎美智はがっちりと掴んだ手首を放さない。流石柔道インハイ出場は伊達じゃない。真横にいるため、その殺気だった視線が俺にもろに刺さった。茶色のくせ毛に愛くるしい顔をしているのだが、いまの彼女は控え目にいって阿修羅だ。
「このオフ会を兄貴が知っちゃったからね」
としごの妹、背後の加奈が返答する。だが答えになっていない。
なぜカラオケボックスの部屋を間違えたぐらいでこのような脅迫まがいの仕打ちを受けるのか、俺には理解できない。
冷静になろうと俺は周囲を改めて観察した。すると中央のテーブルにはおよそカラオケには縁のない一台のノーパソがあった。
(おかしい)
しかもそこからはよく見るとHDMIケーブルが延びており、入り口横のモニターに接続されている。肝心のモニターは真横の江崎の影になり俺からは見えないのだが。