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IWN(淫夢を狙え)  作者: MUR
第五幕
17/25

古書

 翌朝7時少し前、俺は学校の中を自分のクラスに向かって歩いていた。

 こんなバカ早い時間に登校したのには訳がある。

『明日朝7時、教室で待ってる』

 

 昨日の夜、江崎と別れた後にこんなメッセージが会長から返信されていたからだ。

(眠い)

 こんな朝早くに呼び出して、いったいナニをしようというのだろうか。

ひょっとして、教室には誰もいない、とかじゃないだろうか。

 あの会長なら面白半分でホントにやりそうだ。

 教室に入る前、少し立ち止まって気持ちを落ち着かせる。


 ガラガラガラ。


 果たして、教室に入ると、そこはもぬけの殻、ではなく会長は自分の席についていた。

 何かの本を読んでいるようだ。

「おはよう」

「お、おはよう」

 朝日に照らされた会長の笑顔が眩しい。今までの経緯が無ければ、確実に落ちていただろう。

 そう思わせるには十分な魅力があった。


「いったい何の用事ですか」

「これを見てくれる?」

 会長は眺めていた本を手渡してくる。

 パッと見ると和綴じの、それもなかなか古い本のようだ。


「中見てもいいですか」

「どうぞ」


 本を受け取る。

 受け取ってすぐ、強烈な違和感を覚える。


 原因はすぐに分かった。

 表紙と裏表紙に何かの動物の皮が使われているのだ。

 通常の和本では考えられない、多分。


「これはなんですか」

「学校で保管されていた古書なの、でも私には何が書いてあるのかさっぱりで」


 パラッとめくって中を見ると目まいがした。

 保存状態が悪い上に、かなり崩れた草書体で書かれている。

 何がなんだかまるで分からない。


 ずっと見ていると頭が痛くなってくる。


「明日朝までに何が書いてあるか調べてほしいの」

「そんな無茶な」

 相変わらずの理不尽である。


「あなたに拒否権があると思う?」

 無駄にいい笑顔で微笑みかけられる。

 思わず押し黙ってしまう。


「一部でも分かれば大丈夫」

「だから、お願い、ね」


「分かった」

 俺は渋々了承した。


「後でお礼にいいことしてあげるから」

(いいこと……だと……)

 動揺を悟られまいと平静を装う。


「先払いしてもいいけど」

 会長が突然俺の手に自分の手を重ねてきた。


 まるで白磁のような白さで、そのしなやかで繊細な感触は美術品を連想させられる。


「その手には乗らない」


 俺はやんわりと振りほどいた。


 プロ童貞は迷わない。


 前回は失態を晒したが、二度同じ手は喰らわないのだ。

 それがプロ童貞の意地なのだ。


 ちなみに素人童貞という言葉はホントにあるがここでは1ミリも関係ない、おそらく。


「そう、残念」

「この本今日だけ預かっていいですか」

「ええ明日朝、開会式前に返してね」


 俺は正体不明の本を受け取った。



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