黄昏
夕暮れ時、全てが燃えるようなオレンジ色に染まっていた。
「今日は練習よかったのか」
「うん、今日は調整練習だから」
さすがに日が短くなってきている。
あと30分もすれば、あたりは暗くなるだろう。
「久しぶりだね、一緒に帰るの」
「ああ」
気のない返事で応える。
小学校の頃、俺と江崎は同じ道場に通っていた。
あの頃二人一緒に帰るとよく冷やかされた。
その後、俺は柔道を止めてしまい、一緒に帰宅することも無くなった。
「あそこの駄菓子屋よく寄ったよね」
江崎が古びた建物を指さしながら笑う。
「じゃあ寄ってくか」
「え」
軽く驚いたようだが、反対はされなかった。
ガラガラガラ。
薄汚れたガラス戸を引く。
入り口すぐにアイスボックスがある。
あの頃と配置が全く変わっていない。
無造作にその中から一つ取り出す。
「おばあちゃん、これ」
店奥でうつらうつらしているおばあちゃんに声をかける。
「はいよ。100円」
俺は小銭を取り出し釣銭受けに入れた。
チャリ。
力を込め、半分に切り離し、出てすぐの所で待っていた江崎に片方差しだす。
「ありがとう」
以前はよくこうして分け合ったものだ。
どちらともなしに道路を挟んで向かいにある公園の中へ入っていく。
並んでブランコに座りチュウチュウ吸いながらボーッとする。
あの頃二人で分けても大きく感じたアイスだが、今見るととても小さく感じられる。
ふと目をやるとアイスを咥える江崎の横顔が視界に入った。
なぜかその唇がとても艶っぽく見えてしまう。
(いかんいかん)
俺はムラッとしたことに軽い自己嫌悪を感じた。
慌てて今日の本題をどう言い出すか、強引に思考を切り替えた。
気づくとアイスはほとんど無くなっていた。
「用事って何?」




