第一話 〜痛み〜
気が付いた時には、野次馬だらけの道路に立っていて。
ふと辺りを見回したとき、最初に目に入ったのは―――。
ただの肉塊になった自分の姿だった。
こんな状況になったも妙に落ち着いてる自分がいることに自嘲の笑みがこぼれる。
「さーて、どうしますかねぇ…」
「何?交通事故?」
後ろを振り返ると、幼馴染みであった―――智香。
「ちょっと、智香…。」
「やだ、優美!?嘘でしょ!?」
どうやら死者の声は生者には届く事はないらしい。
「すぐ近くに、いるんだけどな。」泣きながら、自分だったものに縋る友を見ながら呟く。
どうして。
どうして、伝えることができない?なぜ、答えてくれない?
いくら考えたって、答えなんて出るはずもなくて。
痛くて、辛くて。もどかしかった。
彼女との思い出で一番古い記憶は、小学校3年生の頃。
複数の男子に無視をけしかけられ怯えていた智美を助けたことから始まった仲だった。
私は虫やオバケ、怪談話など普通女子が苦手なものがまったく平気だった。
「あ、ありがとう…。」「いーよ。にしても、あいつらうざったいなー。」
今度あったときは思いっきり殴ってやろう、と呟いた数秒後に笑い声が聞こえた。
「な、なんか変なこと言った?」「ううん、ちょっとおかしかっただけ。」
それからというもの、何かあるその度に彼女と行動をともにした。
それから中学、高校、大学とずっと続いてきた仲のはずだった。
なのに。
どうして、離れてしまったのか。
なぜ離れなければいけなかったのか。
私は、神様とかは信じていない。どうせ人間が創った偶像だと思っていたから。
信じていればよかったのだろうか。
信じていれば、いわゆる天国にいけたのか。
信じていれば彼女を、
彼女の泣き顔を見なくて済んだのだろうか―――。
後悔だけが私の胸の中に渦巻いていた。