序章
こんなんでいいのだろうか…。どぞ
ここは、我々の住む世界とは僅かに異なる世界。地形や気候は、我々の世界と全く同じ。ただ、地名と辿った歴史がいささか異なるそんな世界である
世界の呼び名は「イース」。大陸の呼び名は「アージャ大陸」「ノーア大陸」「サーア大陸」「アーリカ大陸」。この四つである
「…なんかこう…パチモンぽい呼び名はなんだ。オーストラリアはどこいった。つーか、イースって、EARTHの読み間違いとしか思えねー…!!」
そう一人呟きながら頭を抱えているのは、ユート・ヴォルフ士官候補生である。彼は、士官候補生共通の紺色の詰襟の上着を着直しながら溜め息をつく
「死んでテンプレ転生した先が、平行世界の地球で小規模戦闘が毎日起きている、第三次世界大戦勃発から20年目の世界だとは…」
彼・ユートは、転生者である。死亡原因が、街中で起きたヤクザ同士の銃撃戦に巻き込まれたからである。もっとも、たまたま乗り込んだ路線バスを挟んで、ヤクザが銃撃戦を始めるなんて誰にも予想できないが…
「よぉ、ユート」
「ショータか。そろそろ見合いだっけか」
ユートに声をかけたのは、同期のキクチ・ショータ。黒髪短髪黒目に中肉中背な典型的なジャポニカ人(我々の世界の日本)である。
「そ。我らが副官達との大事なお見合いだ」
「演習時指揮訓練組み合わせ…だったか」
演習時指揮訓練組み合わせ…士官学校最終学年である4年生が、一年間とにかくやりまくる(授業の実に95%!)演習の指揮官と副官を決める組み合わせである。もっとも、指揮官と副官以外にも、オペレーターや火器管制官などのブリッジクルーとも顔合わせすることもあるが…
「んで、めぼしい娘は見つかったか?」
「…ショータ、ナンパじゃないんだからさ」
「似たようなもんだろ?副官学科は99%が女子なんだからさ」
「そりゃそうだが…てか、そういうのを考える前に、演習時の自分の艦隊編成は考えたのか?…砲打撃艦隊だろうけど…」
「グッ!」
士官学校で使用される武器や兵器(戦車などの陸戦兵器や戦闘機などの航空兵器、戦艦・空母などの艦船など)は全て正規軍からの払い下げである。そのため、旧式だったり廃棄間近だったりしたものを整備・改修・改良して使っているのだ。
「わ、悪いか!砲打撃はロマンだッ!」
「いや、悪くはないが…。まぁ、砲打撃戦に持ち込めば…イケるか?」
「だろっ!?」
「…問題は多そうだけどな。対潜とか…」
「ムグッ…。そ、そういうユートはどうなんだよ。最大12隻で編成出来るけど、どうすんだよ?」
「俺か?…まぁ、もうすぐ副官募集の為に編成公開するから…教えてもいいか」
そういうと、脇に抱えていたケースから一枚の書類を取り出す
「えぇっと…編成登録12隻で、…駆逐艦4隻、巡洋艦3隻、戦艦2隻、大型航空母艦(旗艦)1隻、潜水艦2隻〜!?なんだ、この編成!?スッゲー中途半端じゃないか!」
「ま、端から見れば…な。とはいっても、結局艦隊に求められる役割って、ケースバイケースなんだよ。そう考えるとある程度融通きく艦隊編成をするしかないんだよ」
「けど「…それに」さぁ…?」
「…なんとなく…なんだけどな。予感みたいなもんなんだけど…」
ユートは、窓から士官学校軍港に目をやり呟くように告げた
「たぶん、この戦争…激化するぞ。そのために…少しでも知識を蓄える必要があるんだ」
「いつもの勘…か?」
「…あぁ」
「そっか…。…お前の勘って、イヤなくらい当たるからなぁ。やれやれ…」
ショータは、肩をすくめながらも笑う
「これから戦争するんだ。激化もなんもあったもんじゃないけどな!ま、気楽にな!」
「…ふっ、それもそうか。戦争だ、なら…」
二人の拳が、突き合わされる
「「派手にいこう」」
序章 終
次は副官との顔合わせ…です。たぶん…メイビー…。