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エピローグ 余白の安らぎ

いつも読んで頂きありがとうございます

夜明け前のロビーは、昼間よりも静かだった。


瀬戸は、当直明けのカウンターに立ちながら、照明の落ちた天井を見上げていた。

勤務内容は変わらない。

接遇。補助。未清算対応。


ただ一つ違うのは、

自分がもう「評価される側」ではないという事実だった。


端末を開く。


自分の名前は、評価一覧から消えている。

削除ではない。

完了扱いだ。


評価されなかった。

だが、失格にもならなかった。


その状態に、いまだ慣れきれない。


――普通なら、不安になるはずだ。


だが瀬戸の中にあるのは、不思議な静けさだった。

何かを得た感覚も、失った感覚もない。


ただ、

埋めなくてよかった場所が、まだ残っている。


ロビーの奥を、人影が横切る。


九条だった。


視線は合わない。

声もかからない。


それでいい。


あの人は、導かない。

評価もしない。


ただ、判断が壊れない場所に人を置くだけだ。


瀬戸は、ふと考える。


もし、あのとき判断していたら。

もし、余白を埋めていたら。


――ここには、立っていない。


業務端末に、新しい通知が届く。


【未清算案件:観測中】

担当:継続


理由は書かれていない。


瀬戸は端末を閉じ、深く息を吸った。


評価は終わった。

だが、判断は終わらない。


それでいい。


このホテルは、

答えを出す場所ではない。


答えを出さないまま、立ち続ける場所だ。


ロビーの静寂は、今日も変わらず、瀬戸を包んでいた。

そして、その静けさの中に、誰かがまだ観測している。


評価欄の外側で。

ここまで読んで頂きありがとうございました

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