第七話 判断が生じなかった夜【解答】
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翌朝。
瀬戸は、再び管理端末の前に立っていた。
昨夜の案件は、
処理済みでも、回収済みでもない。
処理状況欄には、簡潔に記されている。
――判断未提出。
自分の判断が、
案件の状態を固定している。
その事実を、瀬戸は初めて実感した。
「瀬戸」
背後から、九条の声が届く。
「確認を行う」
「はい」
「昨夜の判断について、補足はあるか」
瀬戸は、首を振った。
「ありません」
「理由は」
「判断が、成立していませんでした」
九条は、即座に否定も肯定もしなかった。
「成立しない判断は、評価できない」
「……はい」
「だが」
九条は続ける。
「異常とも、断定できない」
端末に、新しい分類が追加される。
――評価保留対象。
対象名:瀬戸 遥斗。
瀬戸は、その表示を見つめた。
評価されていない。
だが、処理もされていない。
宙に浮いた状態。
「君は、判断を拒否したわけではない」
九条の声は変わらない。
「判断を生じさせなかっただけだ」
瀬戸は、静かに頷いた。
「それは、余白だ」
その言葉は、評価語ではなかった。
だが、記録された。
「余白は、現時点では不要だ」
少し間を空けて続ける。
「だが、排除理由にもならない」
九条は端末を閉じる。
「観測を継続する」
それだけ言って、立ち去った。
瀬戸は、しばらくその場に立ち尽くしていた。
評価されない。
判断もされない。
だが、
自分の中に何かを留めている感覚だけは、
はっきりとあった。
それを埋めてしまえば、
もう戻れない。
理由は分からない。
だが、そう思った。
ロビーの照明は、
いつもと変わらず一定だった。
夜は、静かに終わっていた。
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