27
【レオン視点】
俺は広場の壇上から、眼下に並べられた罪人たちを見下ろした。
ざわついていた群衆も、俺が一歩前に出ただけで静まり返る。視線はすべて、俺に集中していた。チャスはまだ目を逸らしたままだ。アルトの作った氷の中に閉じ込められながら、顔をしかめている。
「チャス・レイフォード」
俺が名を呼ぶと、その場の空気がぴんと張りつめた。奴はぎこちなく顔を上げたが、その目にはもう、あの傲慢な光は残っていなかった。
「お前は王より預かった騎士団の権威を私物化し、その地位を使って民を裏切り、子供たちを金で売り飛ばした」
俺の声は、風に乗って広場の隅々にまで届く。それを遮る者はいない。息を呑むように、皆が耳を澄ませていた。
「お前の行いは、騎士である前に人として終わっている」
チャスが小さく唇を動かすが、言葉になっていない。もう言い訳など、意味を成さないのだ。
俺はゆっくりと右手を掲げ、はっきりと宣言した。
「チャス・レイフォード。お前は公開処刑とする!」
言葉が落ちた瞬間、どよめきと賛同の声が広場を揺らした。誰もがその裁きを待ち望んでいたのだ。民衆の怒りも、正義も、いまここに結実した。
チャス、これが、お前の結末だ。
自ら積み重ねてきた罪の重さ、骨の髄まで思い知れ!
【エルナ視点】
旦那様の声が広場に響いた瞬間、私は正義が勝った瞬間だと感動すらした。
「……公開処刑とする!」
その言葉を、私は確かにこの耳で聞いた。
ざわめきが広場を駆け抜け、民衆たちの間に賛同の声と歓声があがった。孤児院で働いていた女性の証言にもあったように、子供たちが次々と姿を消していたのだ。真相が明らかになった今、民衆たちの怒りは凄まじかった。
私はチャスを見つめた。あの男は、うなだれたまま微動だにしない。茫然自失とはこのことか。あれが、かつて“正義”を掲げた騎士の末路なのだと思うと、喉の奥がひりついた。しかし、子供を“カボチャ”と呼び、無垢な命を数字で数えていたあの男に、もはや同情など不要だ。
氷が溶けた数日後、チャス騎士団長の公開処刑は滞りなく執行された。
そして同じ場で、ガスキン子爵もまた、同罪として処刑された。
領主として本来ならば、騎士団の不正を止める立場にありながら、それを見て見ぬふりをしていた――いいえ、利益の話を持ちかけられて断ったとはいえ、何も行動を起こさなかった。その責任はそれだけの重罪に値する。
ガスキン子爵が所持していた音晶石には、孤児を他国へ売り飛ばす取引に加わらないか、と誘う生々しい声が残されていたのだから。




