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お祭りの当日。
「おまつり! おまつり!」
ルカは嬉しそうに両手をぱたぱた振りながら、私の横をぴょこぴょこと跳ねていた。商店街の広場には屋台がずらりと並び、甘い香りと笑い声が満ちている。私たちのクレープ屋台も、隣の金魚すくいも大賑わいだった。
金魚すくいの屋台では旦那様とユリル、トミー、騎士たちが子どもたちの相手をしている。
「ルカ、いっておいで」
背中を押すと、ルカは小さな足でとことこと屋台へ向かった。
水の中の金魚を見て目を輝かせる。
「ルカもやってみるかい? これでお魚さんをすくうんだ」
ポイを握りしめ、水面をじっと見つめるルカ。何度も失敗し、それでも諦めず――ついに小さな金魚をすくい上げた。
「やったぁ!」
旦那様たちが拍手する。私も屋台の隙間から大きく手を振った。
その日、クレープ屋台は大繁盛し、用意した材料はあっという間に尽きた。
「旦那様、材料を取りに行ってきますね」
私は食堂へ向かい、小走りで戻る途中――裏通りで足を止めた。
酔った男たちが若い女性を囲んでいる。
「いいじゃねぇか、減るもんじゃなし!」
「やめてくださいっ!」
女性は必死に抵抗していた。助けを呼べる者はいない。
私はため息をつき、歩み寄る。
「困りますね。皆が楽しむお祭りの日に、このような真似は。おとなしく家に帰りなさい」
男たちの顔が歪む。
「なんだてめぇ、女のくせに――」
振り上げた腕を、私は無造作に掴んだ。
次の瞬間。
「痛っ、痛ててっ!」
関節をひねり上げる。体勢を崩した男を足払いで倒し、別の一人の腕を極め、地面に叩きつける。抵抗は数秒も続かなかった。
「女だからと侮ってはいけませんよ」
最後の一人を地面に転がし、微笑む。
「弱い者にしか立ち向かえないあなた達は、私の敵ではありません」
「文句があるならグリーンウッド侯爵家へどうぞ。商店街近くの、一階が食堂とカフェの家です。ご存じでしょう?」
男たちは青ざめた。
「ひっ……レオン騎士団長の奥方!? すみません!」
蜘蛛の子を散らすように逃げていく。
助けた女性は涙目で頭を下げた。
「ありがとうございます……! 本当に素敵です……元女性騎士という噂は本当だったんですね」
「どういたしまして。女性ひとりで裏通りは危ないわ。気をつけて」
――そのとき。
視線を感じた。
裏通りに面した人混みの向こう。こちらをじっと見つめる影がひとつ。敵意はない。だが油断もできない。
影がゆっくりとこちらへ歩み寄る。
そして――




