おまけ コミカル版ざまぁ
※こちらは本編とは別のおまけです。コミカルです。残酷ではありません。
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修道院に入って、私は悟った。
ここは――私の知っている世界とは、まるで違っていた。
まず、朝起きる時間。
五時ではない。四時だ。
しかも、起床の鐘など鳴らない。鐘の音に頼るのは甘え、というのがこの修道院の教えらしい。
代わりに、厳しい修道長の怒鳴り声が、石造りの廊下に響き渡る。
「眠れる仔羊ども! 神の光を浴びよ!」
いや、浴びたくない。眠い。寒い。まだ夜です。
涙目で起き上がり、冷水で顔を洗い、朝の祈りへ。
祈りは二刻。立ちっぱなし。もちろん、微動だにしてはいけない。
一度、寒さに震えたら、「動くな」と厳しく叱責され、腕立て伏せを10回×3セットさせられた。
なぜ、神への祈りで鍛錬を課されるのか。問い詰めたい……
食事は一日二回。
朝は黒パンと野菜スープ。ソーセージや卵は二日に一回しか出てこない。
夜は豆やじゃがいも中心で、肉はたまに、ほんの少しだけ。しかも、食事中は一言も喋ってはならない。音も立ててはならない。
スプーンが器にカチンと当たっただけで、「無駄口に値する」とされて罰を受けた。
解せぬ……。
労働も厳しい。
修道院の畑で雑草をむしるのは当然として、夏場は重い桶を担いで水を運び、冬場は凍った地面を耕す。
「自然と一体になれ」という教えらしいが、指がかじかんで自然と一体になる前に、指先が自然に死にそうだった。
さらには戒律の数々。
一、笑ってはならない(神の前では常に厳粛であれ)
一、鼻歌を歌ってはならない(この意味は修道院長もわからないらしい)
一、くしゃみをしたら三度祈れ(悪魔が隙を狙っているため)
一、鳥を羨ましがってはならない(自由の象徴ゆえ、禁忌らしい)
最後の戒律を聞いたときは、さすがに泣いた。
鳥くらい、自由に羨ましがらせてほしい。
夜、ひとり寝台に沈みながら、私は小さな声で呟く。
「……私、いったい、何をやらかしたのかしら」
思い出すたび、胸が痛む。
そして次に、無性に笑いたくなる。
こんな、過酷な、ばかばかしい戒律に泣かされる自分が、あまりにも情けなくて。
夜空に瞬く星を見上げ、私は固く誓った。
「もしあのときに戻ってやり直せるのなら……今度はエルナさんと仲良くします……絶対に神殿に告げ口になんか行きませんっ!」
けれど、当然ながら時間が巻き戻るなんて奇跡は、私には訪れないのだった。




