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夫がよそで『家族ごっこ』していたので、別れようと思います!  作者: 青空一夏
第二部

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14

 家に戻ると、旦那様はアルトを抱いたまま、二階の居間へと向かっていった。本来なら、アルトはルカと一緒に留守番しているはずだったのに。

 まさか、あの広場まで飛んできてしまうなんて――思いもしなかった。


 私は食堂のソファで眠っているルカを見て、思わず微笑んだ。

「お帰りなさい、エルナさん。ルカはずっとお昼寝していました。途中でアルトが窓から飛んでいった時は、さすがに驚きましたよ」

 ユリルが笑いながらそう言う。


「ええ、アルトは大活躍だったわ。ユリルにも見せたかったくらいよ。ルカの世話をしてくれて、ありがとう」

 私がそう返すと、ユリルは「神律会審より、ルカと遊んでいる方が楽しいから大丈夫です」と明るく笑いながら、帰っていった。


 ルカを抱きながら、私も旦那様がいる二階に上がった。ソファにそっと寝かされたアルトの隣に、ルカを優しく横たえる。

 それから一刻ほどのあいだ、静かな時間が流れた。

 やがて、ふたりは同じタイミングでぱちりと目を開ける。


 一緒に目覚めるなんて――どこまで仲良しなのかしら?


 思わず笑みがこぼれた私は、アルトのもとへ駆け寄る。

「アルト、今日は本当によく頑張ったわね!」

 声をかけると、アルトは嬉しそうに尻尾をぱたぱたと振った。

 柔らかな純白の尻尾が左右にふわりと揺れ、透き通るように美しい羽が、微かに虹色を帯びて輝く。

 旦那様も微笑みながら、アルトの頭を優しく撫でた。


「お前が適切な罰を与えてくれたおかげで、コルネリオ大神官にもいい薬になったと思う。……まさか、あんな凄い能力があったとはな」


 旦那様に褒められたアルトは、嬉しさを隠しきれないようだった。

 誇らしげに胸を張る得意げな表情は、どこか子供のようでたまらなく愛おしい。


 その場にいなかったルカは、私のそばに寄ってきて、何があったのかと小さく首をかしげる。

 旦那様が、ルカにもわかるように、優しく説明してくれた。


「とても悪い人がいたんだ。その人を、アルトが少しだけお仕置きしてあげただけさ。……ほら、前にアルトが部屋の中を寒くしたことがあっただろう? あんな感じで、少し寒い空気にしてあげたんだ」


「わかった! あると、いっぱいがんばったんだね。えらい、えらい!」


 ルカが小さな手でアルトの頭をなでると、アルトは嬉しそうに鼻をすり寄せる。

 家族みんなの間に、温かい空気が満ちていく。


「これで、ひと安心ね」

 

 アルトは、満足そうにルカの隣りで身を横たえた。

 その姿を見ているだけで、胸の奥がじんわりと温かくなる。


 ──もう、コルネリオ大神官に怯えることはない。

 家族も、アルトも、私自身も。

 守るべきものは、すべて守れたのよ。


ドネロン伯爵夫人視点


 私の噂は、あっという間に王都中へ広まっていった。


「ドネロン伯爵夫人が神殿に密告したらしいわよ。……それを利用してコルネリオ大神官が、あんなことを企てたんですって」

「あぁ、そうしたらあの騒動のタネをまいたのは、ドネロン伯爵夫人というわけ?」

「最低ですわね」


 昼夜を問わず、そんなささやきが、まるで針のように私の耳を刺してくる。

 どこに行っても、視線を感じた。

 侮蔑を含んだ笑い声が背後から追いかけてくるたび、心臓が縮こまるようだった。


 気づけば、夜会の招待状も、お茶会の誘いも、すっかり途絶えていた。

 あれほど賑やかだった交友関係は、まるで潮が引くように、跡形もなく消えた。


「……なぜ、こんなことに……」


 私は小さく呟く。

 こんなつもりじゃなかったのに……




 

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