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夫がよそで『家族ごっこ』していたので、別れようと思います!  作者: 青空一夏
第二部

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13 お仕置き/大神官視点・逃げる/ドネロン伯爵夫人視点

コルネリオ大神官視点


 凍てつく冷気が、じわりと地を這い、私の足元にも忍び寄ってきた。


「なっ……なにを……やめろ……やめ――!」


 声が凍りつく。

 あまりにも冷たい空気に、肌がビリビリと震えた。

 体が、動かない。


 ゴゴゴゴゴ……ッ!

 ミシミシミシッ!!


 耳をつんざく轟音とともに、分厚い氷がせり上がり、私を取り囲む。


 まるで透明な棺。

 いや、それ以上だ――閉ざされた、逃げ場なき監獄。


「なっ、なんだこれは……出せ! 出せぇ!!」


 拳を叩きつける。

 だが氷は、びくともしない。

 衝撃が跳ね返り、拳に鈍い痛みが走った。


 息はできる。

 寒さもひどいが、凍死するほどではない。

 だが……このままでは、何日も、閉じ込められたままかもしれない。


 そんな中――


「…………氷檻の完成ですわね」

「神獣様を、檻に閉じ込めようとしたからですわ」

 氷越しに、貴婦人たちの冷たい呟きが聞こえた。

 くすくすと、笑い声も混じる。


 商店街の女将たちまでも、指を差して大笑いしていた。

「アルトちゃん、よくやったねぇ!」

「悪大神官にはお似合いだよ!」


 私は必死に叫んだ。

「出せ! 誰か! 助けろ!!」


 だが、私の声は氷に遮られ、外には届かないようだ。

 外からの声は鮮明に聞こえてくるのに、不思議だ。


 神獣アルトの作り出した氷。

 これは、ただの氷ではないのか!?


 そんな中、国王陛下が静かに立ち上がった。

「大神官コルネリオ。これをもって、その職を解く。その氷が溶け次第、国外追放とする!」


 その言葉は、雷のように私を打った。

 国外追放!?

 そんな馬鹿な……!

 

「自分がしようとしたことが、かえってきただけだろ」

 冷たく響く声。レオンだった。


「その通りです。神獣様を閉じ込めようとなさったからですよ。アルト様はすべてお見通しだったのでしょう。まあ……氷はいずれ溶けるでしょうから。それまで、少しは反省なさってください」

 デイミアンが軽蔑の眼差しを向ける。


 反省だと? 何を、だ。

 私は神のために尽くしてきたはずだ……!

 

 しかし、神官たちは冷たい顔で背を向け、誰一人、私を振り返る者はいなかった。

 レオンは、神獣を大切に抱きかかえ、家族とともに晴れやかな顔で去っていった。


 残ったのは、庶民たちだけだ。

「恥を知れ!」

「罰が甘すぎる!」

 罵声が飛び交う。


 子供たちまでが私を囃し立て、笑い転げた。

「見て、あれ! 氷の中でプルプルしてる!」

「もっとプルプルしてー!」

 哄笑の波が広がっていく。


 こんなはずではなかった。

 私は、神の代行者だったはずだ。

 神殿の頂点に立つ者だったはずだ……!


 なのに、どうして。

 どうして、こんな……。


 これは間違いだ。

 私は、悪くない!

 


ドネロン伯爵夫人視点


 まさか、神殿で一番偉いコルネリオ大神官様が、国外追放だなんて。

 そんな、馬鹿な……。


 私は思わず身を震わせた。

 私は知らない。

 私は何も関係ない。

 ……そうよ、関係ないはず。


 分厚い氷に閉じ込められたコルネリオ大神官を一目見るなり、私は広場から逃げるように駆け出していた。


 こんなはずじゃなかった。

 神獣が、あんな……あんな恐ろしい力を振るうだなんて。


 もう、エルナたちには関わらない。

 あんな得体の知れない連中、二度と……!


 そう、このまま黙っていれば――

 私には、きっと、なんのお咎めもない。

 何も起きないはず……。


 そう、思っていたのに――


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