12 お仕置き/大神官視点
【コルネリオ大神官視点】
そして――神官たちが、ぽつり、ぽつりと証言を口にし始めた。
「確かに、コルネリオ大神官様がそのように発言されるのを聞きました」
「私も聞きました。“国王陛下に並ぶ者になりたい”と……そう、確かにおっしゃいました」
「それに、神殿の一番上等な部屋がアルト様のために用意されていましたが、そこには……頑丈な檻が設置されています」
「……私たちも、さすがにまずいのではと感じました。でも……大神官様に逆らうなど、とても……」
――やめろ、やめてくれ。
なぜ今、この場でそれを言う?
国王陛下がいる前で、貴族たちが見守るなかで……こんな多くの民の前で!
「さらに、俺はもう三人、証人を用意しております。陛下、よろしいですか?」
「うむ。レオンよ、その者たちを呼ぶがよい」
――まだいるのか? 誰だ……誰が来るというのだ?
民衆の中から、三人の男達が前に進み出る。
「あっしは檻を作った者でさぁ。特注でね。魔力を遮断する鋼を使いました。神殿が気前よく払ってくれましてね――ほら、納品書です」
男が懐から書類を取り出し、高く掲げる。
ざわり、と周囲が揺れた。
鎖職人が前に出る。
「俺ぁ拘束鎖を納品した。猛獣用のやつでさぁ。クマでもライオンでも縛れる代物だ。神殿から注文と聞いたときゃ、耳を疑いましたよ。何に使うのかとね」
「神獣様を猛獣扱いかよ……」
見物人の呆れた声が漏れる。
三人目――術符師が進み出た。
「契約書には、ちゃんと大神官様の印が押されておりましたわ」
術符師は薄笑いを浮かべ、一枚の紙をひらりと掲げた。
「おまえたち……! 私がなぜあれほどの大金を払ったと思っている!? こういう事態を防ぐためではないかっ! 取引の秘密をペラペラ喋って……愚か者どもが!」
私は怒りのあまり、思いっきり怒鳴りつけた。
「へいへい。金なら返してもかまいませんよ。神獣様を怒らせたら、何が起こるかわかったもんじゃありませんからねぇ」
職人の言葉に、場の空気が一瞬静まり返る。それは冗談のように聞こえながらも、誰ひとり笑わなかった。
「……本当に、封じようとしたのか」
「神獣様にそんな……正気じゃない」
「バチ当たりにも程がある……」
ざわ、ざわと広がっていくのは、戸惑いと怒り。
冷たい視線が私に集中する。
騎士たちは無言で私を睨みつけ、貴族たちは眉をひそめ、口元を固く結んでいた。視線が突き刺さるたびに、皮膚が焼けるように痛む気がした。
もう、限界だ。
証人たちの声。さらされた書類。そこに刻まれた私の印。
それらすべてが、確かな重みとなって私を押し潰してくる。
どうにかしてこの場を覆そうと、私は怒鳴った。
「黙れぇ……っ! おまえたちは、何もわかっていない! これは、神のご意志だ! 私は、神の声を聞いたのだ!」
そのときだった。
凄まじい咆哮があたりに響いた。
そして、白い光が天から射し込む。
まぶしさに目を細めた私は、反射的に見上げた。
人々もまた、目をこするようにして空を仰いだ。
そこには――神獣が……
その毛並みは雪のように白く、光を帯びて柔らかく輝いていた。
背には透き通る羽、額には小さな角、神々しさと威厳を併せ持ったその姿に、誰もが息を呑んだ。
私も、目を逸らせなかった。
そして、そのモフモフの神獣は、ゆっくりと、私の前に降り立った。
「く、来るな……! 私は……私は神の代行者だぞ!」
声が裏返る。足が勝手に後ずさるが、鼻先をわずかに持ち上げた神獣は
シュゥゥ……と、白い息を静かに吐き出し――




