6 コルネリオの本音と若き神官の苦悩
※コルネリオ視点
ふっふっふ。あいつの弱みをようやく見つけたぞ。ヴェルツエル公爵家の次男、今はグリーンウッド侯爵にして王都騎士団長レオン。
あれは、かなり昔のことだ。神殿の献金にまつわる不正をレオンが陛下に報告したことで、神殿の一部は解体され、資産も凍結された。結果として、私の父は大神官の座を追われ、名誉を地に落とした。
そのときからだ。この仇を、必ず討つと心に誓ったのは。
静かに、だが着実に力を蓄え、ここまで登り詰めた。そして今――あの口の軽いドネロン伯爵夫人のおかげで、絶好の材料を手に入れた。
レオンが陛下から厚い信任を得ていることは、百も承知だ。
だが、今回は庇いきれまい。――神獣が絡んでいる。
あれは本来、神に仕える存在。
ゆえに神殿の管理下に置かれるべき、神聖なるものだ。
今こそ、レオンを蹴落とし、騎士団を掌握する時。
神獣すら手に入れれば、その先にあるのは、もはや王権すら凌駕する圧倒的な影響力だ。
今こそ、この手で掴み取る。
すべては神の名のもとに――
いや、私の野望のもとに。
※ある若手神官の呟き
グリーンウッド侯爵夫人──エルナさんが営む食堂には、昔からよく通っていた。気さくな人柄に、美味しい料理。そして、何よりあの温もりある空間が好きだった。
ルカとアルト様は、まるで店の小さな守り神のような存在で、訪れる人々にとっても特別な存在だった。私も何度かアルト様の頭を撫でさせてもらい、そのたびに癒やされたのを覚えている。
だが──アルト様が神獣だと判明した途端、コルネリオ大神官がとんでもないことを言い出した。
「アルト様は神殿に住まわれるのが、神のご意志である。いずれこちらにお迎えするゆえ、神殿でもっとも良い部屋を清めよ。……いや、改装してもよいな。
アルト様がおられれば、神殿の力も増すし――お前たちの給金だって上がるというものだ。私の影響力も……ふふ、国王に並ぶほどになるかもしれんな」
ニタニタと笑うその顔は、あまりに下卑ていて、とても神に仕える大神官とは思えなかった。信仰心など微塵も感じられない、ただ欲に塗れた俗世の男の顔だった。
アルト様の部屋とされた一室には、大きな檻が設置され、頑丈な鎖まで用意された。
――まさか、神獣様をここに閉じ込めるつもりなのか?
あまりにも酷い……。
果たして、神は本当に、神獣様を神殿に縛りつけることを望まれているのだろうか?
あの自由を愛する瞳が、あの檻の中で曇ってしまったら。
……このまま、黙っていていいのだろうか?
アルト様が神獣であることは、まぎれもなく素晴らしいことだ。
そして、神殿が神獣様と繋がりを持つこと自体は、決して間違っているとは思わない。
だが、それを“管理対象”として扱えと?
檻に閉じ込め、鎖で繋いで?
コルネリオ大神官に逆らえば、自分の立場は危うい。
だが、私はこのまま、目を逸らしていいのか?
こんな仕打ちが、許されていいはずがない。
たとえ、この身がどうなろうとも。
そして、私は――




