34 テオドラの断罪-1
まさか、このような形で法廷に立たされる日が来るなんて――。
ここは王室法廷。王の名によって開かれる、貴族や騎士を裁く絶対の場。私は、被告席に座っていた。
原告席に座るのは、王都騎士団長のレオン様。その隣に、あの女――エルナがいる。
どうして平民の分際で、レオン様と並んで座っていられるのかしら?
身の程知らずだわ!
「テオドラ・ミランディス。伯爵令嬢としての品位を損ない、幼子を誘拐するという前代未聞の罪を犯した。弁明があれば聞こう」
国王陛下のお声が冷たく響く。胸の奥が、きゅっと縮む。
でも、私は怯んではいけない。そう、これはただの誤解なのだから。
「私は、ただ……少し、あの女に思い知らせたかっただけですの。レオン様は、私の運命のお方。あの子は、どうせ平民の子でしょう? ほんの三日ほど、預かろうと思っただけで……そんなに悪意はございませんでしたわ」
会場がざわついているのがわかった。けれど――私は、間違ってなんていない。
ほんの少し、困らせてやりたかっただけ。
いい気になっていた、あの女――顔に醜い傷があるくせに、子供までレオン様に大事にされて、幸せそうに生きていた。平民の傷物のくせにっ!
だって、あの子だって、レオン様の実の子じゃない。それなのに、我が子みたいに可愛がられているって噂を聞いた。
そんなのおかしいわよっ!
「静粛に」
裁判官の杖が、コツンと床を打つ。けれど、ざわめきは収まらない。冷たい視線が一斉に私へ注がれているのを感じた。
そのとき、国王陛下がふっと笑った。でも、その笑みはどこまでも冷たい。目がまったく笑っていなかった。
「幼子を誘拐しておいて、ひと言も反省の言葉がないとは……なんの議論の余地もない。テオドラ・ミランディスに裁定を下す」
国王陛下の声音が、容赦なく場に響き渡る。
背筋が凍った。
――裁定?
私に?
……そんな、大げさなことになるなんて思っていなかったのに。
「第一に、エルナとルカへの正式な謝罪を命ずる。三日後、王都民市が開かれる王宮広場にて、罪状を記した《《札を首に下げ》》、《《地に頭を垂れて》》詫びよ。第二に、ミランディス伯爵家には罰金1,300金貨を科す。第三に、テオドラは《《社交界から追放》》とする!」
会場が一気にざわついた。
――平民に地に頭を垂れて謝罪!?
社交界から追放?
そんな……嘘でしょう?
「待ってください! 私はその女から、頬をぶたれたのです! それは不敬罪ではなくて!? あちらは平民、私は由緒正しきミランディス伯爵家の長女なのですよ!?」
震える声で、私は叫んだ。涙がにじむ。
――どうして、誰も私の味方をしてくれないの? どうして、レオン団長は一言も私を庇ってくれないの?




