プロローグ
戦場は、混沌そのものだった。
剣がぶつかり合う鋼の音、負傷者の叫び、土と血と汗が入り混じった生々しい匂い――そのすべての中で、私は必死に剣を振るっていた。
ふと、視界の端に見覚えのある姿が映る。
アレグラン――同じ騎士として、それぞれ部下の兵士たちを率い、この戦いに身を投じている。
陽を受けて揺れる金髪が目にはいり、その背には敵兵の刃が迫っていた。
考えるより先に、身体が動いていた。
「アレグラン、下がって!」
私は彼を突き飛ばし、代わりにその剣を受けた。鋭い痛みが頬と肩を貫く。装甲の隙間を狙ったかのような一撃。
血が溢れ、視界が揺らいだ。
それでも剣を振るい、敵兵を退けた。最後の力を振り絞って。
「……無事で、よかった……」
アレグランの顔が、驚きと戸惑いに染まっていた。
私が自分を庇って倒れたことに、まだ現実が追いついていないような目だった。
後悔なんてなかった。密かに想っていた男だったから……
アレグランの、戸惑いを浮かべた美しい蒼の瞳を見つめながら――私は、そっと意識を手放した。




