プロローグ――息吹
【一巻想定範囲】
C O N T E N T S
プロローグ――息吹 ←←←現在ここ
第一章 わたしの居場所――播種
第二章 過去をペースト――灌水
第三章 幕が上がるまで――発芽
第四章 並んで歩く理由――着蕾
エピローグ――余香
○○○のお話その1――積肥
○○○○のお話その1――堆肥
「女の子は好きですか?」
わたしは隣の子についなんとなく、いや、ちょっと本気で聞いてみた。
ここで本来「好きだよ」なんて言葉で返ってくるのが、わたし自身、ほしい言葉なのだろう。
隣の子の顔が一瞬で振り向く。
なぜか眉間にしわがよっているような……。
「は?」
うん、知ってた。
いや、知ってるからわざわざそんな反応しなくてもよかったのに……。
わたしがみじめになるじゃん!
―入学式中―
「新入生代表、甜美凛桜」
「はいっ!」
わたしは甜美凛桜。高校デビュー、大成功済みの陽キャだ。
新入生代表が少しだけ証拠――になるはず。(成績の問題だけど)
新入生代表とは、この場に集まる全生徒の中で成績トップ、ただ一人の選ばれし者なのだ。
この日のためにどれだけ努力したことか――まあ、誰も知らないだろうけどね!
さぁ、わたしの美しい姿を拝むがよい。
そして、この世界に知らしめてやる!(知らしめることなんてあるっけ)
「風に舞う花吹雪が眩しい日にわたしたち五百六十一名の新入生は無事入学式を迎えました」
――本当はここで、わたしの美しすぎる一語一句を
みなさんにお見せしたいんですけどー……。
長いのめんどいから省略しまーす♡ by凛桜
それにして生徒数多くないか……五百六十一!?
「やっと終わった……」
入学式も無事終了。
ちょいと落ち着いたところで、仕切り直そう。
そう、わたしは甜美凛桜。
中学では友達の数が片手で足りる陰キャだったが、お姉ちゃんに手助けをしてもらい、ついに陽キャデビューを果たしたのだ。
そんな陰キャだったのには、わけがあるのだが、ここではあえて触れないでおくとしよう。
……さて、これから本当の高校生活が始まる!
そして現在、入学式が終わり教室へ戻っている途中なのだが……。
ひっ、
先ほどから隣にいた子の冷たい視線を感じている。
わたしは思わず、声をかけてしまった。
「ど、どうしたの、何かあった?」
「……。」
む、無視!?
そんなにおかしなこと言ったかなわたし(言ってましたね)
変に思われていないといいんだけど――いや、絶対変に思われてるやつだこれ……。
「ご、ごめんさっきのは気にしないで」
とりあえず勘違いはされたくないし否定しておく。(手遅れ)
今後の私の陽キャライフだけは、邪魔しないでおくれよ……。
―教室に戻り―
わたしたちの担任であろう先生が教室の扉を跨ぎ、黒板へと手を伸ばす。
「よし、さっそく自己紹介の時間だ。まず先生からだな、俺の名前は都知己栄太だ。栄太先生と読んでくれて構わない。一年間よろしくな!ちなみに、行事ごとは1位以外許さないからな!」
なんなんだこの先生、熱血系なのか?嫌な予感しかしない。
「そうとは言っても、ご褒美がないとみんなやる気でないと思ってだな、ちゃんと考えてあるんだ。それはまたのお楽しみだがな」
なんだ良い先生じゃん。
でも、期待はしないでおこう――ジュースだけとか考えたくもない。
「それじゃあ俺の自己紹介が終わったところで、早速みんなにもしてもらおう」
わたしは"自己紹介"という存在をみんながどのように感じているかを知りたい。
中には適当に済ませたり、ふざけたりしているのじゃないだろうか。
しかぁし!自己紹介というのは今後の学園生活の"運命"を決めるとても大事な時間でもあるんだよ。
特にその人の第一印象を決めるようなものなので、
ここで失敗すると延々と孤独を味わうことになるだろう。(経験者が語ってますねさすがです、はは)
「じゃあ1番から…… 」
「はいつぎぃー……」
淡々と進んでいく、ここのクラスの人達は重要さを自覚しているのだろうか。
「5番○○でーす。おなしゃーす」
いや、してないなこれぇ!
そんな中……
「はい次、9番の人」
「はいっ」
お?なんなんだこの子は、凛々しい輪郭にさらっとした金髪の長い髪、どこかのお嬢様か?雰囲気がある。
「私は……」
空気が一気に静まり返った――そんな気がした。
「足利中学から来ました、九条澪と申します。好きな食べ物はお…コホッン! おっと失礼… オムライスです、よろしくお願い致します。」
ちょいまて、なんか言いかけてなかった?お……?もしかして女の子!?(んなわけがない)
それよりなんなんだ、何もかも完璧じゃん、拍手もすごいし、これじゃわたしの陽キャ光が薄んでしまう!
わたしの番で光を塗り替えさないと!
さきほどの澪さん以降も何事もなく淡々と進んでいた。
おもしろみがないよね、それはそれで良いことなんだろうけど。
そしてついに、わたしの番が来た。
「次17番、甜美凛桜」
「はいっ」
クラスのみんなもざわざわしつつ、わたしの自己紹介に注目している。
みんな、わたしを見て騒いでる。やはり首席という立場がここで効いてきた。
くっくっくっ計画通り。
「ふぅー…」
さっきの澪さんみたいに噛まないようにしないとね、ましてや"女の子"なんて言ってしまったら……。
「わたしは清張中学から来ました、甜美凛桜です。好きな食べ物は女の子です!」
あ……、ためらいもなく言ってしまった。
「え…」
クラスメイトの驚く声が聞こえてくる。
やってしまった、さっきの澪さんの言葉を考えすぎてついつい言ってしまった。
どうすれば……ここはひとまず言い間違えだと否定しないと。
「は、はは冗談ですよ冗談、本当に女の子が好きだったらこの教室入る前に襲ってますって、はは」
入学式、隣の子襲いかけてたことは、なかったことにして…。
それにしても危なかったなー。
危うくデビューが台無しになるところだった。
「失礼しました!改めて好きな食べ物はピザです、3年間よろしくお願いします!」
と、ここで疑問に思う方もいるだろう"3年間"。
これは言い間違えでもなんでもない、ここ水嶺台学園では何事もなければクラスは変わらずそのまま引き上がる形式となっているらしい。
とはいえ、なんとか巻き返せてよかった…。
「次、19番の白鷺琴さん」
「はい」
今度はなんかクールっぽい子が来たな――って入学式で隣だった子じゃん!しかもめっちゃ睨んできてる
ていうか顔面強!
「光明中学から来ました白鷺琴です。えー、自己紹介の前に、入学式中にそこの甜美凛桜さんに『女の子は好きですか?』と聞かれたのですがみなさんどう思いますか」
クラスの視線が一斉にわたしに集中する
こいつめぇーわたしをここで潰して学校来れなくする気だな!
やめてほしい、わざわざここで言わなくても!
「いやいや、そんなわけないですよぉ!聞き間違えだよ聞き間違え♡」
クラスメイトが優しく笑っている。
どうやらわたしがボケたと思っているらしい、本気だったんだけど、まあーよき。
「そうですか、すみません。今のは忘れてください」
はあー怖すぎだろ白鷺琴さん、急にあんなこと言うの?今後の要警戒人物だな。(元はといえばこの人が悪い)
この人とは、きっと長い3年間になる。嫌な意味で。
こんな風に学校初日を無事に?終えたわたしなんだけど、これ大丈夫だよね、わたし成功してるよね、ちゃんと陽キャしてるよね、やばいやばいやばい!
わたしは回りから見ると余裕のある人に見えるかもだけど、内心超超超があと1億つくほどの陰キャなんですよぉ!
お姉ちゃん助けて!!!(結局はお姉ちゃん頼り)
こうしてわたしの学園生活は思っている以上に面倒くさく、そして賑やでとても騒がしい毎日になりそうなのだった。
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