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土曜日が終わらない

作者: 小雨川蛙

 

 ある日、人々はその異変に気付いた。


「え? やっぱりそうだよね?」

「うん。間違いない……」

「だよね? だよね!?」


 そう。

 ある日から時間がループするようになったのだ。


「土曜日が終わったのに翌日も土曜日だ……」

「記憶は引き継がれるっぽいな」


 どうやらこの現象は世界中を巻き込んだものらしい。

 原因はまるで分からないが……。


「こういうのって大抵悪い奴が何かをしているんだよな」

「漫画とかゲームならな」

「じゃ、どうする?」

「どうするって言われても……」


 そう。

 実のところ、誰も何かをするつもりはなかった。

 何せ、土曜日なのだ。

 月曜日でも、火曜日でも、水曜日でも、木曜日でも、金曜日でも――日曜日でもなく。


 当日は休み。

 翌日も休み。

 最高の曜日が永遠にループしている。


 挙句の果てにループするが故に善行をしようとも悪行をしようとも翌日には全てがチャラだ。


「最高じゃん」


 皆がそんな結論に達し、同時に世界中の人々が言葉に出さずに同じことを考えた。


『このまま永遠に続けばいいのに』


 いや、それどころかTVやインターネットを通し全世界に呼びかけがされたほどだ。


『この状況を受け入れましょう』


 それは言外に余計なことをするなという世界の意思表示でもあったのだ。


 ――だが、そんなある日。


「は!? 日曜日なっている!?」


 突如、そのループは終わった。


「誰だよ!? 余計なことしやがったのは!」

「ふざけんなよ! マジで!!」

「出て来い! 殺してやる!!!」


 人々は怒り狂ったが誰が何をしたのかは遂に誰にもわからなかった。



 ***



 世界の片隅で人々から未来を奪う恐ろしい魔王を倒した勇者が居た。

 ――彼が人間に失望し、絶望するのは日曜日のお昼のことだ。

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― 新着の感想 ―
 未来を奪う魔王と未来に失望していた人々の対比を勇者視点で感じた瞬間、世界の理に失念が覆う。けれどその日の昼には気付かされる辺りが皮肉的ですね。
勇者ももうちょっと待ってれば、きっとチャラになるからと悪いことをするやつが出てきて、それを事前に止めようとしたりして、まだ起こっていない事柄に何かをする者が現れたり、その土曜日が苦痛でしかない人もいて…
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