第1話 推しの中の人は男子高校生!?
今回は死と魔法を掛け合わせた話になっています。
魔法少女。
それは地球を侵略しに来た怪物たちと、人類の未来を守るために戦った少女たちのこと。
この戦いは約五百年にもおよび、彼女たちはその間、命を落とすことなく怪物と向き合い続けたという。
これは、そんな戦いを生き抜いた一人の魔法少女と、一人のVTuberの物語。
⸻
「私は2000年前に地球を救った魔法少女、ひめちゃんですー!可愛くて無敵な魔法少女ですー!……でも、そんな私にも悩みがあるんですー!」
私は今日も生き延びてしまった。
「この呪いもなかなかしぶといなぁーもう2000年以上経ってるのに死ねないなぁ。今度友達に頼もうかな?」
怪物との戦いが終わってから、もう長い。だけど、私たち魔法少女は”不死”の体。どれだけ傷を負っても、命が尽きることはない。
だから……死ねない。
人間が寿命で死んでいくのが、時々すごく羨ましくなる。
私たちが”死ぬ”ためには、ただ一つの方法がある。
それは――「子孫を残すこと」。
私の魔法体質は遺伝する。
でも……私はこんな苦しみを、自分の子どもに背負わせたくない。
そんな時、私は出会った。
――VTuber『メルリアちゃん』。
困難にも折れず、真っ直ぐで、優しくて、勇敢な子。
メルリアちゃんの配信は、私に「生きよう」と思わせてくれた。初めて、心の底から「もう一度頑張りたい」と思えたんですー!
私はメルリアちゃんを推して五年。
ついに、彼女の所属するVTuber事務所に――入社しましたですー!!
⸻
「本日から入社した、姫ノ芽菜です!」
※偽名です。かわいいので気に入ってるですー!
「姫ノさん、よろしくお願いします。私は社長の春先芽吹。こっちは、うちの代表的なVTuber、メルリアの中の人だよ」
(……こ、この人がメルリアちゃんの中の人!? すごい……!)
「初めまして、メルリアやってます。……俺のこと、知ってます?」
(声太っっ!!?どうやってあの高い声出してたんだよ!?!?しかも学ラン!?)
「あの……学ラン、なんですね?」
「あぁ。話してなかったね。彼、高校生だよ。たしか高二だったかな」
「えっっ!? 高校生なんですか!? すごい……! あっ、メルリアちゃんの声どうやって出してるんですか!? 機材は何使ってるんですか!? 教えてくださいですー!!」
「……」
(はっ!興奮して詰め寄りすぎたです!)
「はぁ……お前もか」
「えっ?」
「お前、俺目当てでこの事務所来たんだろ? そういう奴、めちゃくちゃ多いんだよ。俺に群がって、配信もせず、仕事しないで俺の邪魔ばっかしてくる。
……そんな奴は、役に立たない。すぐにクビだ」
「は? 勝手に決めつけないでくださいです!」
「……」
「確かに、私はメルリアちゃんのファンです。でも、それだけじゃないんです。メルリアちゃんみたいに人の心を救える存在になりたいんですー!」
「……そーかよ」
「待ってください!!」
「今度は何だよ」
「サインくださいです!!」
「…………あぁ、わかったよ」
これが、私とVTuberメルリアちゃんとの出会いでした。
裏話
ひめかちゃん達の他にも生きている魔法は何人かいます。
お互い300年周期で再開しています。