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童話

目のちいさなひと 口のちいさなひと【冬の童話祭2026】

作者: ウソップ・パロディック

     ▼▲▼ 目のちいさなひと ▼▲▼


【雪の夜】


空からは、しんしんと雪が降ってきます。


あいちゃんは、窓の外を見ながら、小さくため息をつきました。


「どうして、わたしの目はこんなに小さいんだろう。」


スマホのカメラを向けられるたびに、笑うのが少しだけ苦手になります。


【赤い箱】


クリスマスの朝。


あいちゃんのお部屋のツリーの下に、小さな赤い箱がありました。


ふわふわのリボン、金色のカード。


カードには、大きな文字であいちゃんの名前が書かれていました。


あいちゃんは、期待に胸をふくらませながら箱を開けてみました。


そこには、いろんな色のチークにアイシャドウ、マスカラや太いチップに細いチップ、太さの異なるブラシが一式。


高そうなビューラーや、極細のペンシルアイライナーまで入っています。


そう・・・箱の中にはメイク道具一式が入っていたのです。


あいちゃんが、びっくりしながら、メイク一式を取り出した時、箱の中から金色の封筒がポロリと零れ落ちました。


【サンタさんの手紙】


あいちゃんはそっと、封筒を開きました。


 * * *


あいちゃんへ。


人はね、誰もがきらきらとした光を持っているんだよ。


そのメイク道具は、光を飾る“あそび”のようなもの。


雪にイルミネーションを灯すと、雪はうれしそうに光をかえすでしょう?


あいちゃんのお顔も同じ。


「たのしい」や「うれしい」をのせると、その光が、周りに広がっていくんだよ。


鏡の前で、にっこり笑ってごらん。


それは、あなたにしかできない、いちばんすてきな表情だから。


サンタさんより


 * * *


【お母さんといっしょ】


お母さんが、あいちゃんの肩ごしにのぞきこみました。


「サンタさん、やるわね。いっしょにやってみようか。」


ふたりは鏡の前に並びました。


お母さんがブラシをふわりと動かしながら言いました。


「メイクってね、隠すためのものじゃないのよ。“わたしっていいな”って思うための魔法みたいなもの。」


あいちゃんはお母さんのまねをして、そっとブラシを動かします。


するとどうでしょう?


お顔全体がほんのり色づいて、鏡の中の自分が、少しうれしそうに見えます。


お母さんが言いました。


「ほら、あいの目。とってもかわいくなった。」


あいちゃんは照れくさく笑います。


そうして小さな目の奥がきらきらと輝くのでした。


【夜のひかり】


夜になりました。


外では、雪が静かに降り続けています。


あいちゃんはベッドに入る前、机の上のメイクボックスをそっと開けました。


ブラシの先に残った粉が、光をうけて、きらきらと光ります。


「ありがとう、サンタさん。」


あいちゃんは、小さな声でつぶやきました。


その声に応えるように、外の雪がふわりと光りました。


それは、自分を好きになるきらきらとした光。


あいちゃんの胸の奥にも、小さくあたたかい光が優しくともっていました。



     ▼▲▼ 口のちいさなひと ▼▲▼


【内気な女の子】


小さなその街に住んでいたのは、ちょっぴり内気な女の子、ゆきちゃん。


ゆきちゃんは、自分の「口」が、すこし小さいことを気にしていました。


おしゃべりするのも、笑うのも、どこかぎこちなくて、だれかと目が合うと、すぐにうつむいてしまいます。


学校で一番に目が行くのは、ばっちりメイクを決めた美人で人気者のお友だち・・・あいちゃん。


あいちゃんは、口も大きくて、声も自信たっぷりで、はっきりしています。


そんなあいちゃんと、自分を比べてしまいます。


「わたしなんて・・・伝えたいことも上手に言えない。」


ゆきちゃんは、それを自分の口が小さいせいだと思っていました。


【小さな木の苗】


クリスマスの夜・・・


小さなためいきといっしょに、ゆきちゃんは、つぶやきました。


「もっと口が大きかったらなぁ。そしたら、きっとうまく話せるのに。」


翌朝は、とっても寒かったので、ゆきちゃんは、ベッドから出るのがとってもおっくうに感じていました。


ジリリリと鳴る目覚ましを止めるのも、布団にもぐったまま。


そうして、右手をにゅぃぃっと伸ばしてボタンをポンと叩くように目覚ましを止めた瞬間のことです。


ゆきちゃんは、ベッドのまくらもとに置かれた小さな鉢植えと金色のメッセージカードに気が付きました。


それは、葉っぱがほんのりピンク色をした、小さな木の苗とサンタさんからのカード。


ゆきちゃんは、二つ折りにされたメッセージカードをおっかなびっくり開いてみました。


【サンタさんのメッセージ】


 * * *


この木の苗は、あなたの“ことば”で育つ木。


誰かに伝えたい気持ちを口にすると、その気持ちが栄養になって、葉っぱや実が増えていくよ。


どんなに小さな声でも、どんなに小さな口でも、本当の気持ちは、世界を育てる力があるんだよ。


サンタさんより


 * * *


「木なんか、本当に育つのかな?」


ゆきちゃんは、半信半疑でした。


【小さな言葉】


朝ごはんのあとのことです。


お母さんがエプロン姿で台所に立っているのを見て、あいちゃんは、勇気を出して小さな口を開きました。


「・・・お母さん、いつもおいしいごはんを作ってくれてどうもありがとう。」


その言葉を聞いたお母さんは、にっこりと微笑みました。


その日の夜のことです。


なんと、木に、ちいさな赤いキャンディーの実がひとつ、ぽつんとついているではありませんか!


ちょっぴりうれしくなったゆきちゃんは、次の日から、少しずつことばを口にするようになりました。


「ありがとう」


「ごめんね」


「たのしかったよ」


ゆきちゃんの小さな口からでた言葉は、どれも小さな声でしたが、木の苗はどんどん育っていきました。


そうして、ふわっとあまい匂いできらきらとした輝きを放つキャンディの実も、いくつも実るようになりました。


ある日のこと。


ゆきちゃんは、勇気を出して、キャンディーをひとつ口に入れてみました。


するとどうでしょう?


次々に不思議なことが起こるようになったのです。


口が大きくなったわけじゃないのに、ゆきちゃんが発する言葉を聞いたまわりの人たちの表情がふんわり優しくなっていったではありませんか!


【変わった世界】


キャンディをなめるたびに、伝えたいことが、前より少しずつ伝えられるようになって、話すたびに、笑ってくれる人がふえていきました。


ゆきちゃんは、気づきました。


「わたしが変わったんじゃない。わたしの言葉が、世界を変えているんだ。」


その日から、ゆきちゃんにキャンディは必要なくなりました。


口が小さいことも、気になりません。


前は、うらやましかった美人で上手に話せるあいちゃんにも、にっこり笑って、おはようと言えるようになりました。


そしてある日、あいちゃんにこう言われたのです。


「ねえ、ゆきちゃんの“ありがとう”って、すごく心があったかくなるよね。」


もうゆきちゃんが、鏡に映る自分の小さな口を見て落ち込んだりすることはありません。


だって、この口から出る言葉で、だれかが笑顔になることを知っているから。


それは、サンタさんがくれたキャンディの木が、教えてくれたことなのです。


【去りゆくサンタさん】


クリスマスもとっくに終わった年末の夜の空。


トナカイたちは、降りしきる雪の中をやわらかく走っていました。


サンタさんは、子供たちの家の屋根の上でそりを止め、そっと窓の中をのぞきました。


小さな灯りに、女の子の笑顔。


メイクボックスや、小さな木の実・・・古びたおもちゃ箱さえ、きらきらとした星のようにきらめいています。


トナカイさんが言いました。


「あの子の中にも、ちゃんと灯がともったね。」


サンタさんは、ひげの下で満足そうに微笑みます。


夜風が、サンタさんのコートのすそをやさしく揺らしました。


星たちは瞬きながら、きらきらと空の道を照らします。


今年の仕事は、これでおしまい♪


「メリークリスマス。きみの笑顔が、世界の灯りになりますように。」


サンタさんの声は風にのって、みんなの夢の中へと届くことでしょう。


 * * *


トナカイたちは、静かに空へ駆け上がり、サンタさんのそりは、金色の光を残して小さく消えていきます。


夜空の雪は、まるで仕事を終えたサンタさんに拍手をするように、ぱらぱらと降り続けるのでした。

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― 新着の感想 ―
読んでいて、なんだか優しい気持ちになりました。 あいちゃんもゆきちゃんも、自分を大切に生きていけそうですね。 読ませていただきありがとうございました。
すごく素敵で美しい童話でした! サンタさん、とてもいい仕事をされましたね。
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