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なろうラジオ大賞6 応募短編集

クリスマスイブのままのカレンダー

作者: 青帯


 冬音(ふゆね)はカップラーメンをすすった。


 クリスマスイブの夕食としていかがなものか。

 その自覚はあるけれど、今夜は一人だし。


 仕事を終えてアパートに帰ってくると、すぐに部屋着のパーカーに着替えた。

 ヘアゴムで前髪を雑にアップしておでこ全開。

 ちょっと人には見せられない。


 正直寂しい27歳のクリスマス。

 だけど悲嘆しているわけじゃない。

 週末には湊斗(みなと)に会えるから。


 湊斗とは付き合って3年になる。

 去年私が転勤になってからは遠距離恋愛。


 だけど二週間に一度くらいのペースで会っている。

 壁のカレンダーにも、週末に『デート』と書いてある。


 本当は今日会いたいけど、平日だから仕方がない。

 ケーキは週末に一緒に食べよう。


 だから今日はカップラーメン。

 これはこれで好き。


 不意にチャイムの音がした。


「お届け物です」


「どうも」


 配達員からラッピングされたプラスチックの(はち)を受け取った。


 失敗したな。着替えないで出ちゃった。


 気を取り直してテーブルに置いた鉢の花を眺める。

 可愛らしい白い花。


 冬音へ


 メリークリスマス

 今日は会えなくてごめんね

 かわりといっては何だけど

 冬音の好きなクリスマスローズを送るよ

 週末に会おうね


 湊斗より


 ふふ。湊斗ったら。

 嬉しいことをしてくれるじゃない。

 クリスマスローズをカレンダーの下の棚に移す。

 そしてマジックで12月24日に×印を付けた。

 あと3つ×を付ければ、湊斗に会える。


 そう思っているとスマホが振動した。

 湊斗からの着信だ。

 急いで応答をタップして言った。


「湊斗、クリスマスローズありがとう!」



 ベッドから起き出してカレンダーを見た。

 12月23日まで×が入っている。

 クリスマスイブの朝。

 湊斗に会えないのは残念だけど週末会える。


 そう思って出社して、帰宅して、カップラーメンをすすっていると――。


「お届け物です」


 湊斗からクリスマスローズが届いた。

 嬉しいけど、何か引っかかる。

 首を傾げながらカレンダーの12月24日に×印を付けた。

 週末には、湊斗に会える。



 クリスマスローズが届く。

 12月24日に×印。

 週末には、湊斗に会える。



 クリスマスローズ。

 ×印。

 湊斗には、会えるよね。





 クリスマスイブを繰り返している理由は分かっている。

 週末には泰斗に会えると思い続けたかったから。


 だけどあの着信は湊斗のお母さんからだった。


「泰斗は亡くなりました」


 信じたくないよ。湊斗。


 クリスマスローズに触れて、その花言葉を思い浮かべる。


『私の心を慰めて』

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