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空賊追跡!

……………………


 ──空賊追跡!



 ウォースパイトはガリア国家憲兵隊の要請を受けて、直ちに人質を乗せて逃げる空賊の飛行艇を追うことになった。


 民間飛行艇の速力はそこまで速くない。空賊が機関を改造していたとしても、それは変わらないだろう。


 その点、ウォースパイトは高速空中戦艦に部類されるものであり、空賊の飛行艇を追いかけるには十分な性能を有していた。


 逃げる空賊をガリア国家憲兵隊の軍用飛行艇が追っており、空賊の位置情報が常に報告される中、ウォースパイトが空賊の針路を遮るような軌道を描く。


「通せんぼするだけでいいんでしょうか?」


「いや。恐らくは再び臨検を行う必要があるだろう。君も知っている通り、ガリアのドラゴンはあまり訓練されていない。人質を助けるならば、我々の力を借りたいとガリア側も考えているはずだ」


 それに、とアーサーが続ける。


「我々がやった方がガリアに我々への好印象を抱かせることになる」


 そう、アーサーは言って緊張した表情を浮かべた。


「ストーナー伍長。先ほどは私が守ってもらった。次は私が君を守る番だ」


「それは」


「これは命令だ。私が先頭を飛行する。ヘイワード中尉にも私のグロリアに乗ってもらう。それでいいだろうか?」


 アーサーが言うのに私は戸惑った。


 確かにさっきは私が先頭という一番危険なポジションに着いた。であるならば、次にアーサーが危険な戦闘に立つことは、公平な判断だと言えるだろう。


 しかし、アーサーは王子なのだ。私のようなほぼ平民とは違う。


「安心してくれ。死ぬつもりはない。君に援護してもらえるならば大丈夫だ」


「……はい! 全力で援護します!」


 私たちはそう結論したが、問題は陸戦隊員の多くを既に空賊の拘束に投じているということだ。残った戦力で十分かと言われると微妙な様子である。


「私も出ましょう」


 そこでそう申し出たのはラムリー中佐だ。


「中佐。あなたが現場に?」


「侮らないでくれ、ヘイワード中尉。私はまだ現役だ」


 ヘイワード中尉が信じられないという表情を浮かべるのにラムリー中佐はそういって、不満げに鼻を鳴らしていた。


「それに私のことをただ飯食らいだと噂している人間もいるようなので、ここら辺で私も実力を示しておこう」


 そういわれてウィーバー上等兵やオライリー伍長が視線を泳がせている。


「では、ラムリー中佐、ヘイワード中尉は私のグロリアに」


「ああ。頼むぞ。ジョンソン中尉」


 そして、ラムリー中佐とヘイワード中尉はアーサーのグロリアに乗ることに。


「私は誰を運びましょうか?」


「ストーナー伍長。君は今回は誰も運ばず、ジョンソン中尉の援護に徹底しろ。空賊の飛行艇から攻撃があれば、反撃して被害を押さえるんだ。負傷者が出た場合にもすぐに輸送できるように待機せよ」


「了解!」


 私はその命令に少しばかり安堵したのも事実だ。これで純粋にアーサーを守ることができるのだと思ったから。


 けど、自分だけ危険を冒していないようで、ずるい気分でもあった。


「敵飛行艇、視認!」


 そこで見張り員が叫んだ。


 雲の中から先ほど拿捕したものより大型の民間飛行艇が出現した。空賊が武装を施したもので、4丁の機関銃を飛行艇の両舷に据えている。


『こちら王立空軍空中戦艦ウォースパイト! 空賊の飛行艇に告ぐ! ただちに停戦せよ! 繰り返す──』


 副長が再び警告を発するが、今度の空賊は完全に警告を無視ししている。


「相手には人質がいて、我々が攻撃できないと分かっているんだな」


「どうしましょうか……?」


「移乗戦闘を仕掛けて、人質を助けるしかない」


 私は不安になってきたが、アーサーはじっと双眼鏡で空賊の飛行艇を見ていた。


 ウォースパイトは無理やりにでも空賊の飛行艇を止めようと、彼の進路方向に向けて進出する。ウォースパイトより鈍足な空賊の飛行艇は頭を押さえられ、針路を変えようとするが、すかさずウォースパイトがその方向に出る。


 ウォースパイトによって通せんぼされた空賊の飛行艇にガリア国家憲兵隊の軍用飛行艇が後から追いかけてきた。


「イーデン大尉。艦長から臨検を実施せよとのことです!」


「了解。出撃だ!」


 イーデン大尉の命令を受けて私とアーサーが発艦準備に。


「行くぞ、グロリア!」


 アーサーが6名の陸戦隊員とラムリー中佐を連れて発艦し、私はエンフォーサー小銃で武装して後に続いた。


「ソードフィッシュからファイアフライ。敵の機関銃の射線に入らないように警戒してください」


『ファイアフライ、了解!』


 空賊の飛行艇には4丁の機関銃が装備されている。大口径のものではないが、それでも十分な脅威になるだろう。


 アーサーは速度を無理やり落とされた空賊の飛行艇に近づく。私はアーサーをいつでも機関銃から守れるような位置を飛行した。


「もう少し、もう少し……」


 アーサーたちが空賊の飛行艇に近づく中、私はエンフォーサー小銃のアイアンサイトを覗き込み、前方の空賊の機関銃に狙いを定めた。


 攻撃許可はまだ下りていない。人質がいる以上、独断で勝手に攻撃し、人質を危険にさらすようなことをしてはいけないのだ。


 私はアーサーとウォースパイトの両方から空賊への攻撃許可が下りるのを待ちながら、警戒を続ける。



 そこでけたたましい銃声が響いた!



……………………

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