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空賊退治

……………………


 ──空賊退治



「アイディアとは?」


 ラムリー中佐がそう尋ねる。


「空賊です。空賊の取り締まりを手伝うんです」


「空賊……?」


 私の提案にエイコート卿はいまいち理解できていない顔をしていた。


「なるほど。ガリアでは空賊が問題になっているのです、エイコート卿。ガリア空軍はその空軍力の低さから空賊に対処できていないのです」


「しかし、空賊とはコソ泥のようなものだろう、タワーズ大佐。大した脅威では……」


「いえ。やつらは民間の飛行艇に武装を施しており、非常に危険です。ちゃんとした軍用飛行艇でなければ反撃にあって、犠牲者が出てしまうでしょう」


 エイコート卿は空賊を過小評価していたが、そうではないのだ。


 空賊は立派な脅威だ。


 民間で運行されている旅客飛行艇や貨物飛行艇に武装を施し、それで他の飛行艇を襲うのである。飛行艇が積んでいる貨物を奪うこともあれば、人をさらって誘拐して身代金を要求することもある。


 彼らがなぜ危険なのかと言えば、その武装だ。飛行艇に旧式ながら大砲を据えたり、機関銃を並べたりすることで、軍隊のそれに匹敵する戦闘力がある。


 ガリアではこの空賊が問題になっている。そう新聞にも書いてあった。


「我々ウォースパイトを含むリバティウィング基地の部隊が大陸海峡(チャネル)を防衛しているのは、ガリアの空賊が大陸海峡(チャネル)に侵入しないようにするためでもあるのです」


「なるほど。その空賊を我々がガリアと協力して取り締まる、と」


 タワーズ艦長の言葉にラムリー中佐が考え込む。


「エイコート卿。早速ですがガリア政府にストーナー伍長が発案した空賊の合同取り締まりについて提案していただけますかな? このままアルビオンに帰るわけにはいきません。外交的成果がなければ」


「分かった、中佐。すぐに提案してこよう」


 エイコート卿はウォースパイトを降りてすぐにガリア政府に提案に向かった。


「タワーズ艦長。空賊取り締まりの場合の手順は?」


「通常、停船させて、それから陸戦隊による臨検だ。ドラゴンで陸戦隊を送り込んで、相手の船舶を制圧することになる」


「では、その準備を願います。恐らくはこれが最後の名誉挽回の機会です」


 これにも失敗したら、本当にもう後はない。


「ストーナー伍長。今回もいいアイディアをありがとう」


「いえ。お役に立てたなら何よりです」


 ラムリー中佐がそう言い、私がそう返した。


 それからはまたバタバタしていた。陸戦隊を相手の飛行艇に送り込む訓練は年に1、2回あるだけで、私もアーサーも慣れているとは言い難い。


「ウォースパイト陸戦隊、整列!」


 そこでハンガーに陸戦隊がやってきた。士気を取っているのはヘイワード中尉だ。彼とエンフォーサー小銃で武装した14名の陸戦隊員が整列した。


「それでは手順を確認!」


「了解!」


 まずはドラゴンに乗り込む手順の確認だ。


 私たち騎手はドラゴンの背に乗るが、他はドラゴンの脇腹にハンモックのような頑丈な布を下げてそこに乗り、その上で自分のハーネスをカラビナでドラゴンのハーネスの固定して飛ぶ。


 背中から降りるより素早く乗り降りでき、さらにはひとつの背中に乗るより、両脇腹に乗ることで2倍の人員を運べるのだ。


 その手順がまずは確認された。


「カラビナ固定を確認!」


 素早く陸戦隊のハーネスとワトソンのハーネスがカラビナで繋がれる。


 ワトソンには両側に2名ずつで、4名が運ばれることになる。


「左右の兵でお互いのカラビナとハーネスの接続を確認せよ!」


「左右で確認!」


 きびきびと陸戦隊の兵士たちは安全確認を行う。


「よろしい。では、騎手に礼!」


「よろしくお願いします!」


 ヘイワード中尉の言葉で兵士たちが一斉にそう叫ぶように告げる。


「よ、よろしくお願いします!」


 陸戦隊は他の空軍将兵と違って鍛えられていてごつく、大柄なので、一斉に叫ばれると威圧感が半端ではない。


「続いて降りる際の動作の確認!」


 この訓練は乗る、降りるを繰り返し、ヘイワード中尉が満足するまで行われた。私とワトソンも付き合ったのですっかり疲れてしまったよ。


「ストーナー伍長。問題なく飛行できるだろうか?」


「ええ。任せてください。ね、ワトソン?」


 そんなヘイワード中尉がやってきて尋ねるのに私がワトソンに確認する。


「大丈夫だよ。けど、もう少しダイエットしてほしいかな。そうしたら早く目的地まで届けてあげるよ」


「部下に言っておこう」


「お願いしよう。ゆっくり飛んでたら機関銃でハチの巣にされちゃうから」


 確かに武装したままの空賊の武装飛行艇に乗り込もうとしたら、機関銃などで反撃されるよね。そこのところはどうするんだろう?


「俺の部下を頼むぞ、ストーナー伍長。お前のことは信頼している」


「は、はい!」


 ヘイワード中尉がそう言い、私は慌てて頷く。


 ヘイワード中尉はアーサーを逮捕したりと妙な過去しかないけど、今はそういう確執はなく、むしろ私に信頼を置いてくれているようだ。


「ジョンソン中尉、カーライル中尉、ストーナー伍長!」


 そこでイーデン大尉がハンガーに戻ってきた。


「まずガリア政府は我々の申し出を飲んだ! 合同で空賊の取り締まりを実施する!」


 おお。無事にその点は通ったならよかった。


「そして、3名に任務が下った!」


 イーデン大尉は続ける。


「まずは空賊のアジトと思しき場所をさがしてほしいとのことだ! 3名は偵察飛行を実施してガリア当局の捜査を支援せよ!」


「了解!」


「具体的な捜索計画はガリア当局との話し合いになる! それまでは待機だ!」


「了解!」


「よろしい!」


 イーデン大尉の命令に私たちが応じ、イーデン大尉は満足げに去った。


「いよいよですね」


「ああ。この任務は成功させなければ」


 私たちはこの任務に全力で当たるつもりだ。そうしないとガリアとは同盟できず、結果としてアルビオンが危機に陥る。


 祖国のためにも、そして戦争を防ぐためにも頑張ろう!



 それから数時間後、ガリア当局の人間がウォースパイトにやってきた。



……………………

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