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航空ショー開幕

……………………


 ──航空ショー開幕



「いえ、少佐。ここでお会いしたのが初めてかと」


「そうか。それは失礼をした。似たような顔立ちの人物と間違ったようだ」


 ヴァイクス少佐はそういってハンガーから立ち去った。


「危なかったな……」


「あれ。まさかジョンソン中尉、以前ヴァイクス少佐に会ったことが……?」


 ヴァイクス少佐が去ってアーサーが呟くのに私がおずおずと尋ねる。


「ああ。4年前にエステライヒを訪問した時にまだ大尉だった彼と会っている。空軍の飛竜騎手だったはずだ。重装戦闘ドラゴンを見せてくれたよ」


「そうでしたか。危ないところでしたね。すみません」


「気にしないでくれ、ヴァイクス少佐は結局気づかなかったからいいんだ」


 私がうっかりヴァイクス少佐をハンガーに連れてきたばかりに、危うく全てがパーになるところであった。危ない、危ない。


「ジョンソン中尉、ストーナー伍長!」


 そこでイーデン大尉が戻ってきて声を上げる。


「航空ショーにおける両名の飛行計画だ。よく読んで把握しておくように」


「了解」


「それからフリードリヒ・デア・グロッセからは我々と同様に連絡飛竜と偵察飛竜の2体が出る。必要なら飛行前に話し合う時間を作ってももいいが、どうする?」


 イーデン大尉はまだ決めかねているようで私たちにそう尋ね、私は先任であるアーサーの方を向いて首を傾げた。


「いえ。必要ないかと。今回はほぼ別々に飛ぶようですから」


「そうか。では、艦長にそう伝えておこう」


 アーサーがそう言い、イーデン大尉は再びハンガーを出た。


「やっぱり警戒してます?」


「ああ。さっきのことがあったばかりだ」


 ヴァイクス少佐はアーサーの正体を知っていた。フリードリヒ・デア・グロッセの飛竜騎手がアーサーのことを全く知らないという保証はない。


 そんなわけで私たちはワトソンたちも交えて、飛行計画を確認する。


「僕はエステライヒ空軍のドラゴンに興味あるけどな。会って話がしてみたいよ」


「君はエステライヒ語を喋れないでしょう?」


「ドラコ語があるよ。忘れたの、ロージー?」


「ああ。そうだったね」


 ドラゴンたちには生まれ持って言語があり、それをドラコ語と呼んでいる。人間にはドラコ語を理解することはできず、ドラゴンたちがそれを明かすまで彼らが独自の言語を持っていることすら知らなかったのだ。


「グロリアは興味はない?」


「あまり。エステライヒのせいであたしたちのスケジュールは滅茶苦茶だし、まだいい印象がないの」


「そうだった。ガリア空軍のドラゴンとも会えなかったね。全く!」


 ワトソンがグロリアの言葉で自分の出会いの機会が減っていたことに気づき、そのことに対して憤慨して見せていた。


「大丈夫。これから他所の空軍のドラゴンと会う機会は必ずあるから」


「本当に? 約束してくれる、ロージー?」


「約束する」


 ワトソンは前から他の場所にいる同胞たちを機にしていた。


 彼は空軍のドラゴン宿舎で生まれ、そのままそこから出ることなく育てられた。だから、王立空軍の、ずっと外にある世界を知りたがっているのだ。


「ねえ、グロリア。君は他の国のドラゴンと交流したことはあるかい?」


「ありますよ。ガリア、ロムルス、そしてエステライヒ」


「凄い! 君はそんなにいろいろな国を巡ったんだね」


「ええ。ジョンソン中尉がいろいろな国を回りましたから」


 グロリアはアーサーと一緒にいろいろな国を回ったのか。そもそも王族であるアーサーのドラゴンっていうのはどういう地位なんだろう?


 そして、私たちは航空ショーに向けてアーサーたちを打ち合わせをする。


 私たちはエステライヒ空軍と合同で、ルーテティア上空を飛ぶ。


「比較的低空の飛行で、地上のランドマークが使用可能だ。地上の地図をよく覚えておけばミスはしないだろう」


「ええ。大丈夫そうですね」


 私たちは高度200メートルを飛行。


 ルーテティアの象徴であるルミエール電波塔や凱旋門、リュミエール大聖堂上空などを飛行し、私たちは市民を楽しませることになっている。


「しかし、花の都ルーテティアの上空を飛べるなんて、少し楽しみですね」


「そうだね。素晴らしい栄誉だ。こんなときでなければ、もっと楽しめるのだが」


「あはは。それはその通りです」


 私たちは準備を進め、そしてつういに航空ショーが開催の日が訪れた。


「これより航空ショーが始まる! 我々はアルビオンの、王立空軍を代表するものとして恥ずかしくないように行動してもらいたい!」


「はい!」


 イーデン大尉がいつものように喝を入れ、私たちが応じる。


「まずはジョンソン中尉とストーナー伍長の出番だ! 励むように!」


「了解!」


 そして、まずは私とアーサーが出撃することに。


 私たちはピエール・クロステルマン空軍基地を離陸し、ルーテティア市街地の上空を飛行。その後、再び空軍基地に戻ることになっていた。


「行くよ、ワトソン」


「了解だ」


 私とワトソンはウォースパイトを発艦し、アーサーとグロリアが続く。


 私たちの展示飛行は特に難しいことはなく、2名で編隊を組んで飛行するだけだ。なので、さほど緊張もしていなかった。


 開始時刻に合わせて私たちは指定されたコースに向かう。


 すると前方をエステライヒ空軍旗をはためかせた2体のドラゴンが飛んでいるのに私は気づいた。緑の鱗の中型ドラゴンと、青い鱗の小型ドラゴンだ。


「あれ? エステライヒ空軍が先導するんですか?」


「いや。我々が先導するはずだ。どうやら向こうはフライングしたらしい」


 少しはエステライヒの人たちも常識を持ち合わせているのかと思ったが、これを見る限りまだまだ私たちの邪魔がしたくてしょうがないらしい。


「どうします、中尉?」


「どうしようもないな。下手に追い越すと事故の原因になり、結果として市民から好意どころか敵意を持たれかねない。ここは安全第一で行こう」


「了解」


 私たちはエステライヒ空軍の2体のドラゴンの後ろを飛行。


 そして、ルーテティア市街地上空に進出した。


「わあ。凄い人だかりですよ、中尉」


「そうだね。私たちの飛行を見るために集まってくれたのだろう」


 ルーテティア市街地には大勢の人々がおり、皆が空を見上げている。


「注目の的だね!」


「まさにだね。気持ちがいいかい?」


「もちろん!」


 ワトソンが自分が市民の注目を集めているのに大満足だ。


 それから私たちはルミエール電波塔を始めとするランドマークの上空を飛び、地上にいるルーテティア市民から喝采を浴びた。


 しかし、それが起きたのはそんなときだ。


「地上から風船が飛んできてます」


「ぶつかりそうか、ストーナー伍長?」


「いいえ。けど、地上で風船を話してしまった子がいるようです」


 私は空中にふわふわと紐がついた風船が上がってくるのと、それを間違って手放してしまっただろう男の子が地上にいるのを確認。男の子の方は必死に空に手を伸ばし、それを母親だろう女性がなだめている。


「中尉。あの風船、届けてあげていいですか?」


「いいだろう。許可するよ」


「ありがとうございます! ワトソン、あれをおいかけて!」


 私は空に舞い上がりつつある風船をキャッチし、それからゆっくりと高度を落とす。私とワトソンが降りてくるのに、地上にいた人々が移動を始め、着陸する場所を譲ってくれた。


「やあ! これは君のでしょ?」


「僕の風船! ありがとう、兵隊さん!」


「もう離さないようにね!」


 私が風船を少年に渡すと周囲で歓声が沸き起った。


「ブラボー!」


「素晴らしい!」


 拍手喝采を浴びて思わず私の顔が赤くなる。展示飛行を勝手に中断してブーイングが来るかと思ったけど、そうではなくて一安心した。


「ありがとうございます。それでは!」


 私は再び空に舞い上がり、アーサーと展示飛行を継続。



 私たちの展示飛行は上手くいったのだが、しかし……。



……………………

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